対談

ESネクスト有限責任監査法人
理事長 パートナー
鈴木 真一郎氏

IPO監査難民という社会課題を解決し 日本経済の発展に貢献

ESネクスト有限責任監査法人
理事長 パートナー
鈴木 真一郎氏

新規IPOをめざす企業が監査法人より監査契約を敬遠される、いわゆるIPO監査難民問題を解決し、次世代経営者を支援することをミッションに設立されたESネクスト有限責任監査法人。設立時の思いや今後の展開について、同法人の理事長 パートナーである鈴木真一郎氏をゲストに迎え、当社代表取締役社長の小宮がお話を伺いました。

対談者様プロフィール

鈴木 真一郎

1985年、太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所。その後、企業成長サポートセンター長、EYグローバルのジャパンエリアIPOリーダーなどを歴任。2020年7月にESネクスト監査法人(現ESネクスト有限責任監査法人)を設立。

次世代の経営者に寄り添い
社会のイノベーションをリードする


小宮
鈴木理事長から新たな監査法人を設立するというお話を伺ったのは、当社の社外取締役をお願いしている時でした。御法人は、IPO準備企業の監査難民問題の解決をミッションとして掲げていますが、これは本当にすばらしいことだと感じています。
鈴木
多くのスタートアップ企業が生まれ、しっかり成長している国ほど国力が強いことは、間違いのない事実でしょう。日本政府もスタートアップの成長を支援する政策を打ち出し、国家プロジェクトも誕生しています。こうした動きのなかで、日本経済の発展に貢献したいとの思いが高まり、IPOコンサルティングなどの経験が豊富な約10名のパートナーと2020年7月に設立したのが、ESネクスト有限責任監査法人です。
小宮
我が国の経済は長きにわたって停滞しており、スタートアップは、これまでの流れを変えるエンジンの一つになると期待されています。日本経済のインフラを担い、日本経済を強くしたいという思いには、本当に感動しました。
鈴木
ミッションは設立時にパートナーと議論を重ね、3カ月かけて策定しました。そして掲げたのが「企業成長を支えるインフラとして次世代を担う経営者と共に社会のイノベーションをLeadする」というものです。IPOでグロース市場をめざす企業、グロース市場からさらに成長をめざす企業にとってのインフラになることが当法人のビジョンです。社会インフラとして課題をスピーディに解決することが必要であると考え、積極的にアクションを起こすように心がけています。

常日頃から耳にしていた言葉が
設立時の大切な指針に


小宮
設立からの軌跡を見ると、まさに社会が求めている監査法人だったことが証明されたのではないでしょうか。
鈴木
私たちは、この4年間で150社を超えるスタートアップ企業を支援してきました。それもあって、売上高は第2期が4億5,000万円、第3期が11億9,800万円、第4期が17億2,300万円と順調に推移しており、業界内における現在のポジションは12位です。ミッションをスピーディに、かつ着実に実践してきたことで、IPO監査難民の問題もかなり解消に向かい、社会の発展に貢献できたのではないかと考えています。
小宮
設立から数年という期間の短さからしてもすばらしい成果ですね。
鈴木
ありがとうございます。とはいえ、この成果は、すべて私たちだけで成し遂げたわけではありません。多くの方からの支援があったからこそ達成できたものだと考えています。なかでも設立に際して大切な指針になったのが、小宮社長が明言していた「前例がないから、他社がやっていないからは言い訳にならない」という言葉です。当法人が取り組もうと考えたことは、まさに前例がない、他の監査法人とは一線を画すものでした。そのため、絶対にこれを言い訳にしてはいけないと、肝に銘じて取り組んできました。
小宮
多少なりとも設立に貢献できたのであれば光栄です。
鈴木
さらに、短期間で一定の成果を上げるためには、早期に社内の基盤を整備し、得意とする分野に集中することが必要です。その意味で、設立当初からBBSの支援を受けられたことはとても有意義なことであり、心から感謝しています。
小宮
とくに貢献度が高かったのは、やはりITガバナンスの面でしょうか。
鈴木
おっしゃるとおりです。監査法人は金融機関並みのセキュリティ構築が求められ、ITに関わるリスクも適切に管理しなくてはなりません。そうした体制維持とアップデートに必要なサポートをBBSからいただいており、今後も支援をお願いしたいと考えています。

働きやすく、希望どおり成長できる風土に
優秀な人財が集まった


小宮
もう一つ、御法人について注目しているのが人財の採用です。すでに、約30名のパートナーを含む約160名体制という組織に成長していますよね。
鈴木
新卒者は、設立1年後の第1期13名から、第2期24名、第3期28名を採用しました。経験者も、若手の会計士を毎年約10名ずつ採用しています。
小宮
すばらしいと思うのは、公認会計士試験に合格したばかりの優秀な方を定期的に採用していることです。かなり難度の高い採用だと思うのですが、この採用が成功している秘訣を教えていただけますでしょうか。
鈴木
設立時から大切にしてきたのは、すべての職員が「働きやすく、希望どおりに成長できる」と心から思える法人にすることです。
小宮
具体的には、どのようなことに取り組まれているのですか。
鈴木
第1期のメンバーが入所すると、設立パートナーが親身になり、情熱を持って徹底的に成長を支援しました。その結果、1期メンバーが「本当に良い法人だ」と感じてくれて、2期メンバーを積極的にリクルートしてきてくれたのです。そして、1期メンバーが自分たちの経験に価値を感じ、同じように2期メンバーの横について情熱的に育ててくれたことで、今度はその2期メンバーが迷わず3期メンバーを集めてくれました。リクルーターが「良い法人だよ」と心から発する言葉が最大の力になり、優秀な人財が集まってきてくれています。
小宮
もう一つ、IPOの支援を通じて日本経済に貢献している、と日々の業務のなかでやりがいを感じられることも大きな要因になっていると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
鈴木
それもあると思います。順調な成長に甘えることなく、5年経っても、そして10年、20年経っても設立時の思いを持ち続けることの重要性については、つねに話し合っており、風土として根付かせていることも大きいと思います。過去にないスピードで成長する組織で、会計士に必要な実力を確実にいち早く身に付け、日本の未来を支えるスタートアップ企業を支援する。このことに、魅力とやりがいを感じてくれているのだと思います。
小宮
経営の視点からすると、人財の採用と育成は、少子化の影響から今後さらに重要度が増す課題です。働く人すべてが「働きがいのある組織だ」と感じて言葉にできる風土をつくることは、経営者の重要な役割ですね。

ブレることなくスタートアップと
その若き経営者を支援していく


小宮
社会を見わたすと、デジタル化へのニーズがこれまでになく高まっています。こうした状況を踏まえて、当社ではDX戦略の推進に役立つサービスの拡充に力を入れています。御法人にとってもデジタル化は大きなテーマだと思いますが、鈴木理事長のお考えをお聞かせいただけますか。
鈴木
デジタル化については、社会動向を捉えるうえで、つねにキャッチアップしておくことが必要だと考えています。業務に直結したところでは電子契約や電子監査調書の導入など、とても重要な課題であると認識しています。
小宮
とくに注目しているものがあれば、教えていただけますか。
鈴木
やはり、生成AIには当初より注目しており、2つの側面から対応を進めています。1つはお客様の業務における活用方法、もう1つは監査や会計といった当法人の業務での活用方法です。そこで、法人内にプロジェクトチームを組織して、生成AIに関する最先端の知見を収集・習得すべく研究に取り組んでいます。
小宮
DXに関してはいかがですか。
鈴木
監査業務にDXツールの導入を検討しており、これについてはBBSの支援も期待しているところです。
小宮
社会に新たな価値を生み出し、発展させていくためには、今後もデジタル化をはじめとするイノベーションが重要な要素になると思います。
鈴木
その点については、私も全く同意見ですね。
小宮
そこで当社では、2021年度にスタートした中期経営計画「BBS 2023」で“Make Hybrid Innovations”というスローガンを掲げ、今期からの「BBS 2026」でも“Evolving Innovations”としてイノベーションへの対応を加速しています。御法人も、社会のイノベーションをリードすることをビジョンに掲げていますが、今後に向けての抱負や展望をお聞かせいただけますでしょうか。
鈴木
今後を見据えると、政府は2023年6月に発表した「経済財政運営と改革の基本方針2023」で、2027年度のスタートアップ投資額を現在の10倍を超える10兆円規模にするとしています。先にお話ししたようにスタートアップ企業の成長は国力を支える重要な源泉の一つですから、我が国の未来のために、今後もブレることなくスタートアップ企業とその若き経営者を支援するESネクストであり続けたいと考えています。
小宮
御法人が今後も社会インフラとしてスタートアップを支え、日本経済の発展に欠かせないイノベーションリーダーとして重要な役割を果たしていくことを期待しています。その過程で、DXやセキュリティ、ガバナンスなどの面で支援が必要であれば、当社も引き続き貢献したいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。本日はお忙しいなか、貴重なお時間をいただきありがとうございました。