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前回のコラム「会計パッケージシステム導入の現状」では、会計パッケージ導入プロジェクトの失敗原因について述べてきました。
今回のコラムでは、会計パッケージ選定のポイントについて述べていきたいと思います。
会計パッケージ選定のポイントとしては、次の3点が重要であると考えます。
システム刷新を行う場合、投資目的や目標は設定されていても、実現に向けた具体的な全体計画が不足していることがしばしば見受けられます。全体計画とは、目標設定とともに現状と目標の乖離を踏まえた課題を洗い出して整理したうえで、重点課題の解決に向けた実現方法と改善事項を明確にし、改善後の業務全体像やシステム全体像、そしてロードマップ作成とスケジュール化を行いオーソライズすることです。このように「どういう方向に向けて 何を いつまでに どういう方法で どの程度まで」を計画することが重要と考えますが、実際に見ていくと以下のいずれかが不足しているケースが多く見受けられます。
こういったことが整理できていないと、パッケージ選定の局面において、当事者として持つべき判断基準が定まらず、現状維持プラスアルファを求めしまったり、必要以上の機能や仕様を求めてしまったりして、目標達成に向けた適切な判断ができない状況となります。またプロジェクト推進局面においては、明確かつ具体的な改善計画のもとにプロジェクトのベクトルが合っていれば、時にプロジェクトが躓いたとしても軌道修正できますが、そうでない場合は難航してしまいます。
改善方針を実現する機能面の評価はもちろん重要ですが、表面的な機能のみにとらわれず、実現可能性の観点から導入(運用)の難易度(負荷)に対する評価を行うことで、製品の癖などを含め見極めて自社が求めるべき適切なスペックのパッケージ選定ができると考えます。
以下に、導入・運用の難易度(負荷)のいくつかの評価例を記載します。
社員の異動や入退社、組織変更、取引先の開設、銀行統廃合など、普段から変更可能性が高いユーザーや権限、承認経路、組織変更や取引先開設などに関するマスタ構成や内容と設定方法が、自社で想定している運用体制において対応可能な難易度のレベルであるかどうかを確認する。
会計基準の改定や制度変更による変更可能性のある、勘定科目体系や自動仕訳に関する設定、税制改正による変更可能性のある、税率や税区分に関する設定など、数年に一度の対応であっても迷ったりミスしたりすることなく運用可能な難易度のレベルであるかどうかを確認する。
多機能に見えても、見えていない基本的なところで自社に合わない仕様になっている可能性もあるため、会計システムとしての考え方を確認します。
例えば、次のような経理で常日頃行っている検証・照合業務などを確認します。
1つ目は残高の検証方法です。債権・債務や手形、資産などについて、残高明細を管理できるものとして何があり、どのように勘定科目残高と照合する設計(考え方)になっているのかを確認する。
2つ目は自動計算結果の検証方法です。結果の検証は人間が行い、その確かさを保証しなければならない。しかるに配賦や自動仕訳、システム間データ連携などについて、設定に基づき適切なデータが用いられ、正しい計算が行われていることをどのように検証する設計(考え方)になっているかを確認する。
選定したパッケージ製品では対応できないことがあらかじめわかっている機能については、パッケージとは別で調達することを計画に織り込んでプロジェクトを進められますが、要件定義後にギャップが認識される場合も当然あります。
この場合に別で調達する方法も含めて自社で対応可能であれば良いのですが、そうでない場合への対策も必要です。アドオン可能な製品を選択していれば良いのですが、そうでない製品であれば影響の大きさに関係なく業務運用回避の一択となってしまいます。
近年は製品本体のバージョンアップに影響を及ぼさない形で自社に必要なロジックやプロセスをパッケージシステムのなかに組み込むことが可能な製品も出てきていますので、そういった変更可能性と方法を確認しておくべきと考えます。また、財務会計を中心とした販売管理や人事業務などへの展開、DX支援ツールを含めた自社専用機能が追加できるシステム基盤であるかといった評価もあると望ましいのではないかと考えます。
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