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今回は、「ERP導入の進め方」における「システム導入」をテーマにしたいと思います。システム導入のなかでも、マスタ、データ移行、テストについて紹介します。
スクラッチシステムをERPに変える時に注意が必要な点は、マスタのメンテナンスです。
ERPではデータベースが一元化・正規化されているので、1つのマスタでも項目ごとに担当する部門が異なるケースが多いです。このため、マスタの登録/更新のタイミングや方法、業務ルールを関係する部門間で検討しておく必要があります。
ERPを導入すると、従来のシステムとはマスタの構造が大きく変わることがあります。新旧のマスタを比較することで機能の理解を深めるのが良いでしょう。
例
ERPの各画面・帳票について使用する部門を決め、メニュー画面の構成を決定します。
ここでは、社外で端末を利用する場合も含めて、データのセキュリティを考慮しなければなりません。社内にある端末からのみの利用であっても、ユーザーごとに「データの検索のみ許可/更新も可」などと権限を区別する必要がないか否かを検討しましょう。
使用する部門が決定したら、メニュー画面の構成を検討します。まず決めなくてはならないのは、メニュー画面の構成を、社員別にするのか、それとも部門別にするのかです。エンドユーザー教育を開始するまでにメニュー画面を作成しておく必要があります。
システム移行で考慮すべき主な点を表1にまとめました。
システムの一斉移行は、システム面でも運用面でも難易度とリスクが高いものの、短期間で完了する利点があります。順次切替は、部門別、システム別などさまざまな形態が考えられますが、決定に際してはシステム上の制約を考慮する必要があります。
なお、データ移行後の総合テストでは大量のマスタデータを必要とするため、総合テストの前に移行プログラムを完成させ、事前にデータ移行のテストをしておかなければなりません。そして、本番稼動の直前に再度、データを移行します。
過去には、データ整備が間に合わなかったために、カットオーバーを遅らせたケースもありました。データ整備には十分な準備が必要です。
計画 | 内容 |
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移行の基本方針 |
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本稼働までのスケジュール |
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データ整備計画 |
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コード体系の整備計画 (コード体系の不備、またはコードがない場合のみ) |
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エンドユーザー教育は、データ移行のトライアル後とカットオーバー直前の合計2回実施します。データ移行のトライアル後に行う1回目の教育では、ERPのコンセプトとERPでの業務処理の2つについて説明します。
コンセプトについての教育内容は、ERPにより何をどのように変革するのか、各部門の仕事はどのように変わるのか、といった点に焦点を絞ります。
業務処理の教育では、部門ごとに「どのデータを」「いつ」「どのような方法」で入力するか、また業務フローのなかで、どのような画面・帳票が参照でき、どのように利用するのかといった点について説明します。
エンドユーザーヘの教育はキーユーザーが担当します。キーユーザー自身がより深くERPパッケージを理解する機会をつくることで、システム稼動後の円滑な運用につながります。
2回目の教育はカットオーバー直前に行うため、使用するデータも含めて本番での運用を意識したものとします。
内容は、1回目の復習のほか、変更や訂正などイレギュラー処理についての教育も必要です。この時点では、アドオン/カスタマイズも完了しているので、より実践に近い形が取れます。なお、1回目の教育で参加者から業務上の課題が挙がっていれば、2回目までにその解決策を織り込んでおく必要があります。
データ移行を実施するうえで考慮すべき主な点を表2にまとめました。
項目 | 内容 |
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データ移行関連 (全テーブル/全項目対象) |
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データチェック |
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エンドユーザ教育 |
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社内関連部門 |
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対外的準備(仕入先・顧客) |
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委員会報告 |
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カットオーバー直後の体制 |
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本番稼動後に生じる混乱の約80%はデータの不備に起因するといわれており、データの内容は十分にチェックすることが重要です。
ERPに必須の項目が既存システムに存在しない場合、既存システムのデータを加工してでもつくり出す必要があります。必須項日のデータに漏れがないかはERPでチェックできますが、データの内容に関してはチェックできません。そのため、人による十分な事前検証が必要です。
データチェックにあたっては、既存システムからいったん中間ファイルを生成し、ユーティリティなどのツールでデータを整備した後で、ERPにデータを移行します。
ERPシステムの直接のユーザーではない部門であっても、社内の関連部門に対しては、事前に説明会を実施する必要があります。ERP導入は一部の専任者による活動だけでできるものではなく、全社的な取り組みを必要とします。
仕入先や顧客などの社外関係者に対しても、取引上の変更があるようなら、事前に協力を要請しておく必要があります。例えば、新たな内示・納入指示方式を開始する場合、仕入先に説明して協力を依頼しておかなければ、システムだけがあっても運用できません。
カットオーバーの日時については、移行時にトラブルが発生する可能性を考慮して、予備日を設定しておきます。移行作業は毎日着々と進み、ある時点を越えると後戻りができなくなります。移行作業を中止できる限界の日時までに委員会を開催し、各部門の準備状況を確認のうえ、カットオーバーの正式なGOを出して良いかどうかを判断します。
事前に十分なトレーニングを実施していても、カットオーバー直後には思いもよらぬ事態が発生するものです。
そのため、ユーザーヘの支援体制と問題発生時の連絡体制を事前に決めておく必要があります。エンドユーザー→キーユーザー→プロジェクトメンバー→SIベンダーといった問題のエスカレーションのルートを確立しておくのが一般的です。
総合テストの目的・内容は以下のとおりです。
総合テストは何度か実施します。最初は通常の業務でメインとなる処理についてテストし、次第にイレギュラーな処理のテストへと移っていきます。テストですべての業務処理を網羅するのは難しいため、前もって必要なテストシナリオをつくっておき、進捗状況を管理します。
システムの本番稼動から3カ月から6カ月経過後に、システム稼動評価の分析をします。当初のシステム化の目的が達成されているかどうかを確認し、問題があれば改善計画を立案します。また、運用状況をデータの精度面で検証します。
アドオン/カスタマイズの要求項目のうち、2次開発で対応すると判断して実装を保留していたものについて、再度、優先順位を吟味します。
この頃になると、アドオン/カスタマイズの新たな追加要求が発生しているのが常ですが、これらも含めて再度、当初のシステム化目的に照らして優先順位を付けます。
いかがでしたでしょうか?
「本当にそれでいいのか? ERP導入の進め方」のコラムは今回で終了です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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