激変する調達/購買環境を乗り越え、企業価値向上につながる調達/購買DXの進め方(第2回 システム編)

調達/購買部門の業務内容は年々複雑化しており、仕事の進め方の変革が求められています。
本コラムでは3回に分けて、激変する調達/購買環境を乗り越え、企業価値向上につながる調達/購買DXの進め方について紹介します。第2回は、複雑になる業務を支える調達/購買システムについて説明します。

1.調達/購買システムのねらうべき姿検討

調達/購買システム導入の検討に際しては、まずはあるべき姿(めざすべき方向性)とねらうべき姿を検討します。
あるべき姿は、原材料価格の高騰やサプライヤーリスク管理などの外部要因と、非効率作業や属人化などの内部要因を踏まえ、会社としての調達/購買業務の最終的な姿を描きます。そのあるべき姿を目標としたねらうべき姿は、早期に確実に効果を生むために予算や時間、実現性を考慮して決定していきます。
また、調達/購買システム導入は事業内容やステークホルダーとの力関係によって会社の独自業務が生まれやすいため、ねらうべき姿を定める際には、以下の制約条件を加味した検討が必要です。

  1. 会社により業務が異なる

    調達/購買業務は、事業内容による違いは当然のことながら、購入する品目や頻度、サプライヤー、周辺システムによって大きく異なります。一般的な業務フローがそのまま適用できず、会社の独自業務が生まれやすいという特徴があります。そのため、どこまでを会社の独自業務とするか、調達/購買システム化の範囲(会社の独自業務の反映)を検討・決定する必要があります。

  2. ステークホルダーが多い

    調達/購買業務は、自社内だけでも需要者、調達/購買部門、経理部門などの関係者がおり、さらにサプライヤーは多数になります。ステークホルダーが多いと関係者間の整理や調整に時間や工数が掛かってしまう傾向があります。そのため、余裕を持った調達/購買システム導入スケジュールが求められます。

  3. 内部統制強化と業務効率化のバランス

    調達/購買システム導入において、内部統制の観点は必要な要件です。しかし、ガチガチに固められたルールのなかでは業務効率が低下しますので、ポイントを押さえたシステム化が求められます。

2.購入する品目によるシステム機能

調達/購買の対象は、商品・原材料の調達・製造にかかる直接材と、間接材料や販管費に含まれる間接材に分類されます。直接材と間接材によって、システムに求められる機能は異なります。

  • 直接材

    生産管理システムとの連携が必要です。MRPや在庫管理システムと連携し、製造に必要な原材料を適正なタイミングで調達することが求められます。
    取引量(金額)が大きく、定期的な比較選定を行うことでコストダウンを図れます。見積情報をナレッジとして蓄積し活用できるシステムが求められます。

  • 間接材

    間接財は、多品種少量の発注となることが多いため、取引量(金額)は少なくても業務が煩雑になる傾向にあります。直接的なコストダウンだけでなく、業務効率化により管理コスト低減をねらう方法もあります。

3.調達/購買業務のDX推進例

「1.」でねらうべき姿について定義しましたが、業務効率化を求めるのか、内部統制強化を求めるのかで、活用するシステム機能が異なります。
業務のなかにどのように取り入れるかを検討し、新しい業務フローを構築することで、最大の効果を発揮することができます。

  1. 業務効率化を推進するシステム機能
    • AI-OCR

      システム外で受領した取引関係書類(見積書、請求書など)をPDF化してAI-OCRでデータ化し、調達/購買システムへ取り込むことにより、入力業務負荷の低減を実現します。さらに、入力ミスを防ぐこともできます。
      近年は、AIを活用した非定型型帳票の読取精度が向上し、活用の幅が広がっています。

    • カタログサイト連携

      カタログサイトとシームレスに連携し、カタログサイトに掲載されている商品を調達/購買システムを介して購入することが可能です。他の調達/購買フローと同じように利用できますので、利用者の使い勝手の向上やマスタメンテナンス作業の低減が図れます。また、カタログサイトで購入したデータも同一システム内で管理が可能となります。

  2. 内部統制強化を支えるシステム機能
    • ワークフロー

      調達/購買業務において、ワークフローは必須の機能です。日本の商習慣に合ったルート設定ができるだけでなく、組織変更にも柔軟に対応できる機能が求められます。

まとめ

調達/購買業務は年々複雑になっており、調達/購買システムには柔軟性が求められるようになっています。事業内容やステークホルダーによって業務が異なるため、システム導入時にはパッケージシステムを前提とした業務を検討するのではなく、業務の要件定義によって業務フローを整流化したうえでシステムに求める機能を整理して、システム導入を進めていくことが求められています。