本当にそれでいいのか? ERP導入の進め方 プロジェクト管理編(2)

今回も、「ERP導入の進め方」における「プロジェクト管理」をテーマにしたいと思います。
プロジェクト管理のなかでも、経営層とのコミュニケーション関して説明いたします。

【システム導入効果に関する認識】

これまでシステム導入に関わってこなかった経営層はシステム導入に対して誤った認識を持つことがあります。プロジェクトマネージャーは経営者に正しい認識を持ってもらえるようにコミュニケーションを取る必要があります。

  • システム化目的は明確だが、それを達成するための方策の検討は不十分。しかし、ERPを導入すれば目的が達成できると思い込んでいる。

    ⇒ERPは道具であり使い方によって効果が変わることを理解してもらう。
    システムを導入すれば自動的に生産性が向上し、在庫が減り、省力化できるものではないことを説明する。

    (例)購買部門が欠品対策に追われて、コストダウンにかける時間が10%以下なのに、ERP投資で購買コストダウンができるという誤解

  • 同業他社が利用しているから、製品ブランドがあるからという理由で導入するパッケージを検討なく指示してしまう。

    ⇒自社の特徴や業界でのポジショニングを客観的に判断してトップに進言する。

【運用や組織への影響について正しく報告】

  • ホストコンピューターで稼動しているサブシステムにプログラムが不明なものがある。当時の担当者も不在でシステムのドキュメントもない。

    ⇒実態を報告して、現行システムを白紙にして再構築する際のリスクも説明したうえで全面再構築を行う。この時は、あるべき姿の機能フローを作成して適合するERPを選択し、現状業務・現状システムをいったん白紙にしてERPの業務フローで仕事が回るかどうかを検討する必要があることを説明する。

  • 重複入力のほか無駄をなくして間接部門の生産性を向上させるよう指示がある。

    ⇒重複入力を是正する程度では大きな生産性向上は見込めず、システム投資に見合う効果は期待できないケースが多い。
    ITと業務プロセスを一体で改革することで大きな効果が見込めることをトップに認識してもらい、トップから現場に改革の必要性を指示してもらう。

  • 原価管理のシステム化について指示があるものの、データ入力で要員を増やすわけにはいかない状況にある。

    ⇒現場の実績データを自動で収集するようなMESの導入に傾くが、そもそも精緻な工程マスタのメンテナンスができる組織であるか、体制を構築できるかの確認が必要であることを説明する。

【経営層に伝えること】

  • 経営層がプロジェクトに高い関心を払うほど、全従業員が注目し、変革が成功しやすい。

    ⇒従業員はトップの意向を敏感に反応する。

  • 意識改革の成否は、現場部門がどれだけプロジェクトチームと共通の認識に立って、変革に対する意思を持てるかにかかっている。
    会社全体の意識が改革に向かっていないと、プロジェクトは総論賛成各論反対の嵐に呑み込まれる。
  • 成功事例に共通していることは、経営者による社員に対する直接の働きかけが一回きりではなく、さまざまな場面で繰り返し行い、全社の意識改革を行っている。
    経営者自身がERPの伝道師となって、繰り返し導入への熱意を語ることがプロジェクトチームの活動への強力な追い風となる。

    (例)

    • A社:イントラネットを通じて、トップからの直接の情報発信が継続的に行われた。
    • B社:トップが訪問するすべての部署でERP導入の必要性を説いて回り、現場部門向けの講演会を幾度も開催した。オーナーがプロジェクトルームを激励に訪れる、年始の挨拶などでプロジェクトについて語るということを通じて、従業員が変革の必要性を再認識した。
    • C社:毎月、経営とコンピュータをテーマとした勉強会を経営層に対して行った。これによって経営陣の情報リテラシーが向上した。経営層が率先して情報活用を行う姿は、対利用ユーザー、対プロジェクトチームの変革意識育成にも非常に役立つ。

ERP導入におけるトップの関わり

いかがでしたでしょうか?

次回は「変更管理編」にて業務改革ついて説明いたします。