本当にそれでいいのか？　ERP導入の進め方　システム導入編（1）

BPRに取り組む場合、まず、無駄の発見と、従来の常識を疑うことが、重要なポイントになります。

【無駄とは何か？】

• 企業活動（商品開発→営業→生産→出荷）を行ううえで、付加価値を生まない仕事は「無駄」と捉える。
• 付加価値を生まない仕事とは、その業務がなくても企業活動に支障がないもの、あるいは、考え方を変えることでその業務を省くことができるもの。
• 従来の慣行や常識を疑って見ることで、無駄が発見できる。

【従来の常識を疑う】

• 前任者から業務を引き継ぎ、何のために行っている業務なのかがわからない。
• 管理資料が多数あるが、本当に必要な資料か？　例えば、管理の閾値が決まっておらず、さらに閾値を逸脱した時のアクションもなく、何に使うかがわからない形式的な報告資料になっている。
• 新ERPのプロトタイプを検証して受注から出荷までの業務が回れば、プロトタイプに存在しない業務は本当に必要な業務なのか、再検討する必要がある。
• 部材をまとめて購入してコストダウンを図っているように見えるが、実は仕様変更などで使用しなくなり廃棄していないか？
• 短納期の発注が多いから欠品が多くなると思われるが、実際にそうか？
  過去の発注リードタイムと欠品率の相関分析を行うと、案外、相関関係が少ないことが多い。リードタイムの長さよりも、発注企業の納期に対する厳しさが欠品比率を左右することになる。

次に、システムで解決する前に問題の本質を考えて仕事をスリム化していきます。

【業務変更例】

• 渡り外注の管理工数を削減する

  →複数の外注先を渡り歩くケースでは、そのなかの有力な外注の1社に発注し、発注した外注先から別の外注先に取引するよう変える。
  この場合で、もともとの発注元との直接取引がなくなることで、銀行からの融資を得にくいなどの問題が生じる零細外注先には、一定限度の債務保証を行う。

• 受入検査の滞留管理の工数を減らす

  →入荷する部材を「無検査」「緩和検査」「特性検査」に分類して、入荷の窓口も分け別々の場所で受け入れることで、構内物流を整流化し、部材を探す手間を減らす。
  無検査品は、入荷担当者が対応する。在庫品は直ちに入庫し、製番品は製番ごとに保管する。（受入検査の経由をなくして、物流の動線も見える化する）
  緩和検査品は、入荷担当者が検査員の資格を取得して、外観検査などを行い直ちに入庫する、もしくは製番ごとに保管する。
  特性検査品は、従来どおり検査資格を持つ従業員が検査を行い、倉庫担当者の引渡しで入庫もしくは製番ごとに保管する。（部門をまたぐことで滞留が生じるので、この対象品を極力減らす）

• 納期管理の業務

  →適当な納期で部材を発注しておき、納期が近くなり生産計画が確定して本当に必要になった時に部材欠品を督促する方法（いわゆる一本釣りの納期管理）では、欠品管理がイレギュラー業務ではなく、通常業務となり複雑なシステム機能が要求されるため、仕入先に指定納期が目安ではなく、絶対に必要な時期だと思ってもらう運用に変更する。
  このため、発注では次の3段階で納期のチェックを行う。

  1. 発注後の納期回答
  2. 指定納期直前の納入確認
  3. 指定納期日での確認

  事前の納期確認作業を定着化させることで、欠品の削減を図る。

最後に、BRPを実現していくための重要な考え方である、顧客志向のレベルについて紹介します。

【顧客志向の定着レベル】

• レベル1：今のつくり方が最高

  →「今までできたからこの先もできるだろう」の考えが根付いている。

• レベル2：プロダクトアウト思考
  

  →「○○個単位でものをつくるのが最も効率的である」の考えのもと、自分たちの都合の良いものづくり・改善活動をしている。

• レベル3：マーケットイン思考
  

  →「お客様の要求する単位でものをつくらなければならない」の考えはあるが、自分たちの都合を優先してしまう。

• レベル4：マーケットイン行動

  →「お客様の要求する単位でものをつくる」の考えのもと、お客様の都合を優先している。
  （自分たちの都合は捨てられている）

• レベル5：マーケットイン体質

  →「ものづくりはお客様へのサービスの提供である」の考えが定着し、お客様自身が気付いていない潜在ニーズにも対応している。