本当にそれでいいのか? ERP導入の進め方 選定編(2)

パッケージ選定基準

パッケージを選ぶ基準として、機能の網羅性、コストなどを確認されると思いますが、機能名称によるあり/なしの評価では、確認対象のパッケージ特性を十分に理解することはできません。機能内容と自社が想像するものにはギャップがあるからです。
選定基準を明確にする一つの方法として、デモシナリオの作成をお勧めします。

デモシナリオを用意することで、自社の業務に対する利用イメージを確認することができます。
逆にデモシナリオがないと、各パッケージの得意分野の機能を強調するデモになり、複数のパッケージを比較することが難しくなります。

デモシナリオは、自社の業務フローが複数パターンある場合、主なパターンで2~3作成することを推奨します。

  • 見込生産で、お客様からのフォーキャストがある場合
  • 受注生産で、半製品もしくはユニットで在庫を持っている場合
  • 個別受注生産で、受注後に設計を行い、部材を手配し、生産する場合
  • 製品出荷後に現地で工事が必要な場合

ベンダー選定基準

ベンダー選定基準においては、よくお聞きするやり方として、デモ参加者の多数決で決めるケースがあります。その場合、説明の良し悪しによる人気投票になりがちで、正しい選定ができないリスクがあります。
ベンダー選定の基準について、留意点をいくつかの観点でまとめました。

留意点

  • デモ評価 

    ⇒デモ参加者と関連のない機能の説明に関しては、評価すべきポイントがあっても除外した方が良い

  • 基本要件への対応

    ⇒基本要件に対する実現可否を記載する際は、同時に実現手段の記述も行う。「標準で可能」「画面の変更で可能」「ロジックの変更をともなうカスタマイズ」「外部アドオン機能との連携」など

  • システム全般 

    ⇒バージョンアップを強制するか、あるいは旧バージョンを使い続けることができるかどうか?
    (OSをバージョンアップしても現行APを使い続けることが可能か?)

  • 推進体制

    ⇒PM、コンサルほか各人の役割分担が、フェーズごとに明記されているか?

  • 初期導入コスト 

    ⇒ライセンス、導入フェーズごとの要員数、稼働までの支援、稼働後の保守費用(ライセンス保守費、システム保守費など)

  • トータル運用コスト 

    ⇒初期導入コストのほかに、稼働後5年~10年程度のランニングコストも提示してもらう。ソースコードが非公開でパッケージベンダーのみがカスタマイズできる場合、稼働後のシステム変更が高額になる場合がある

ベンダーの選定基準

選定基準 内容 評価方法
1 デモ評価 デモ対象とした重要機能が当社要件に適合しているか デモ対象とした重要機能を中心にユーザーが評価し、ユーザーの評価結果を事務局が取りまとめて評価シートに反映
2 基本要件への対応 パッケージが要求機能全般に適合しているか 要求機能一覧(生産管理、販売管理、原価管理)をもとに評価
3 システム全般 システムの信頼性、安全性、操作性やシステム的制約の有無など、システム基盤が当社要件に適合しているか 提案書の内容(内部統制・IFRS・コンプライアンス対応)をもとに評価
4 推進体制 導入スケジュールが当社要件に適合し、作業内容、成果物が明確になっており、PJ推進体制に問題がないか 導入ベンダーからの提案書、プレゼン内容などをもとに評価
5 初期導入コスト 提案内容に照らして、各社の見積金額(概算)の特徴を分析し、異常がないか 概算見積およびカスタマイズ工数をもとに評価
6 トータル運用コスト 同上 5年~10年間(リプレイス、バージョンアップなど)のトータル運用費用を評価

またベンダーを評価する際に、有名か否かよりも、力量があり実績の多いベンダーであることを見極めることが重要です。その企業の自前のパッケージ要員が豊富かどうかを確認することをお勧めします。

選定に利用する資料(事例)を紹介しますので、参考にしてください。

評価シート例(1)

評価シート例(1)

提案書、回答書、見積書、プレゼンテーションにより評価項目別に個別評価を行い、獲得得点と重み付けによる換算で評価点数を算出のうえ、コメントの記述を行います。
このサンプルは、トータル運用コストに重点を置いた評価資料になります。

評価シート例(2)

評価シート例(2)

初期導入コストはA社>B社>C社となっています。C社は要件への適合性が高いためアドオンが少なく、TCO(Total Cost of Ownership)が最小で、総合評価も最も高いためC社を採用することが望まれます。

評価シート例(3)

評価シート例(3)

いかがでしたでしょうか?

次回は「プロジェクト管理編」について説明いたします。