本当にそれでいいのか? ERP導入の進め方 プロジェクト管理編(1)

チーム編成

チーム編成に関しては、プロジェクトマネージャーとメンバーに求められる要素について説明します。

プロジェクトマネージャー

  • 職場で人望があり、トップとのコミュニケーションが円滑にできる人

    ⇒職場間でコンフリクトが発生した場合、全体最適のためにトップが調整・指示するよう依頼できる

  • 業務に詳しい

    ⇒現場のわがままなのか、必要な機能要求なのかを識別でき、ユーザーのわがままの場合は説得する力量を持っている。稼働前のトレーニングフェーズではとくに、現場からクレームが上がりやすい

プロジェクトメンバー

  • 次世代の幹部候補

    ⇒どのような人財を集めるかは、プロジェクトに対する、会社としての本気度のバロメーターとなり、社員の協力度合いに影響を及ぼす

プロジェクトメンバーに期待すること

チームメンバーは部門の利益代表ではなく、グループの全体最適を考える意識が必要
全社最適を考えるメンバーを集めるための工夫

プロジェクト推進上のポイント

円滑にプロジェクトを進めるうえで、注意すべきポイントについて説明します。

  • 中期計画にシステム化がどのように寄与するかを明確にし、現状の課題と解決の方策を明示する。
  • プロジェクトチーム発足に際しては、全体への趣旨説明に加え、各部門個別に工数確保の根回しを行う。メンバーは通常業務のほかにプロジェクト業務が増加するので、仕事の一部を他メンバーに移管するお願いも合わせて行う。
  • メンバーに対しては、プロジェクト参画の辞令を交付する。
  • ベンダーとプロジェクトの進め方、役割分担を明確にし、作業の抜け漏れを防止するとともに、進捗遅れのリスクを取り除く。
  • プロジェクト懐疑派に対しての対策を講じる。
    (例)
    • 批判的発言で問題を発散させる

      ⇒議論の前に論点を明確にし、参加者全員の合意を形成する

    • 業務がどうなるかを棚上げにして、現状機能に固執する

      ⇒全体最適のプロセスを作成して、各自の作業の位置付け、自分の作業の前工程や後工程との関連を示して、理解を求める

    • 細部にこだわり、完全なものを求める

      ⇒最初から枝葉の話をしないで、プロセス⇒各プロセスの機能(IPO)⇒画面の項目の順に検討する

    • イレギュラーケースを中心に検討し、本筋を見失う

      ⇒論点整理の前にケースパターンを整理して、検討すべき全体像を明確にする

    • 情報はほしいが、入力はしたくない、という人への対応

      ⇒アウトプット画面、帳票に対して、元になるマスタの項目と項目をメンテナンスする部門を明示して、画面、帳票の必要性を再吟味する(とくに費用対効果の面で)

    • 自分が楽にならないというクレーム

      ⇒作業を自動化するのではなく、発想を転換して、仕事をなくすにはどうするかを考える習慣を身に付けてもらう

スケジュール

スケジュール遅延を起こさないための対応策について説明します。

  • システム化目的を明確にし、機能要求に優先順位を付けておく。
  • 実際の業務を把握するメンバーを参画させ、持ち帰って検討することを極力避け、課題解決案の策定を迅速に行う。
  • 管理帳票や資料についてのカスタマズ可否の決定を迅速に進めるため、資料の棚卸しを行い、a~dに区分する。
    • 使用中
    • 使用しているが当初の目的と異なっている
    • 画面からExcel出力できれば帳票は不要
    • 使用していない
  • マスタ移行やマスタ設定を行える作業者が限定されるため時間が掛かり、スケジュールが遅延するので、移行計画は早めに開始する。
  • カスタマイズに優先順位を付ける。
    (例)
    • 実現できないと業務が回らず、代替手段もない

      ⇒稼働までに必須

    • 必要だが業務による代替手段がある

      ⇒稼働後に優先順位を付けて開発(稼働までは何もしない)

    • 必要だがBIツールなどの代替手段がある

      ⇒ベンダー、情シス部も含めて対応可能なメンバーの工数調整を行う

    • 必要だが稼働時にはなくても良い

      ⇒稼働後に開発

  • 本番稼働前に、ユーザーから「これでは業務が回らない」というクレームが出ないように、プロジェクトチームから社内ポータルなどを通じて定期的にユーザーに状況を発信するとともに、本番稼働前および稼働直後のユーザーテスト段階では、やってはいけないこと(ベカラズ集、エラー事例)を周知・徹底する。
  • 管理資料の必要性の検討に時間が掛かり遅延要因になりがちなので、管理資料はいったん白紙にして、新しい業務プロセスを前提とした時に何が必要かを考える。

いかがでしたでしょうか?

「プロジェクト管理編」の次回は、経営層とのコミュニケーションついて説明いたします。