前回は属人化につながる原因と考えられる例を挙げつつ、それが属人化の罠としても存在すること、またそのような属人化に対してBPOがどう機能するのかについて説明させていただきました。今回は「BPO内における属人化防止の取り組み」と題してBPO内で行っている属人化を防止するための取り組みについて述べたいと思います。
属人化はBPOを行った後のBPOベンダー内でも容易に生じ得るものです。BPOベンダー内で行っている属人化を防ぐ現場での対策例を以下にまとめてみました。
BPOベンダーは業務マニュアルを必ず整備しています。そしてBPO内での業務引き継ぎの際、新たな担当者はそのマニュアルの最新化も行うことが必須となっています。もし業務内容に変更があった場合や使用するツールの更新があった場合、そのことをマニュアルに記載しておかなければ新たな担当者へ業務が移った際に処理を誤る危険性や、引き継ぎ自体ができない状況が生じるおそれがあります。そのような状況になるのを未然に防止するため、徹底したマニュアル化とそのマニュアルの最新化が必要になってきます。つまり初めにマニュアルを作成したとしてもそれを継続して整備しなければ、途中から業務の可視化がされない状況となります。そして、引き継ぎがうまくされないことなどがきっかけとなり、新たに属人化が生じることとなります。そのため業務の可視化は継続して徹底することが必要になります。
業務内容の複雑さや専門性の高さから業務に精通する担当者が1人だけしかいない場合には業務の独占をしている状況が生じ、属人化が生じてしまいます。BPO内では、担当者(オペレーター)と承認者(リーダーオペレーター)の2層構造を必須としています。これにより、担当者の業務独占による属人化を防ぐ効果が期待できます。ただ、このような構造は多くの会社でも当然に採られていることと思います。しかし、この2層構造を実質的に堅持するのは想像より難しいです。それは業務の複雑さや専門性の高さから承認者が業務理解不足に陥り、結果として形式的な承認行為がされることが多くあるからです。このような承認の形骸化は属人化が生じるきっかけとなります。承認者は複数の担当者の承認を行っていることから、業務のアップデートに追い付けないことが要因として挙げられます。これを防ぐためには、承認者の承認数を減らす、または承認者を増やす、担当者と承認者間で情報を共有するなどの対策で、承認者の業務理解を深めることが必要です。
これまで属人化の原因や誘因で述べてきたとおり、業務担当者は一度担当した業務について長く携わることにより、業務内容の複雑さや専門性の高さが要求される業務にも精通することができるようになります。その結果、担当から外れたくないという動機が生まれます。他方で他の担当者は業務内容の難しさから担当したくないという動機が生まれてしまいます。このような状況を放置すればBPOベンダー内でも属人化はすぐに発生します。そのため業務担当者は定期的に担当を変えるなどの配置転換を実施しています。配置転換は会社にとっても担当者間でも大きな負担と考えられますが、属人化を防止する観点からは有効です。配置転換により客観的な視点で業務内容やマニュアルの正確性も検証することができます。
また引き継ぎの際にはなるべく複数の担当者で受ける、業務の空き時間を利用して他の担当業務を習得する、勉強会などを通して他の業務を習得するなどの方法によって、複数の作業理解者を置くことで業務分担も可能となり、1人で業務を抱えて長時間労働になるなどの弊害や不正・誤謬の防止にも役立っています。
以上、BPOでの属人化対策について紹介させていただきました。BPOは単純に業務を請け負うのではなく、継続的に業務を運営することを主眼としています。上記の対策もそのような視点から行われているものになります。サステナブルな組織構築の実現を目標に日々努力しています。
最後に、これまでBPOベンダーとして業務を移管していただく際、さまざまな担当者の方から引き継ぎをさせていただきました。その時に感じるのは担当者の方々が改善や工夫をどれほど多くされているかということです。そして皆さん大変熱心にその説明をしていただきます。属人化が生じる原因として担当者自らの保身というものがありました。これは自分の仕事がなくなるかもしれないという不安から業務を独占して自らの保身を図るといったものです。しかし本来は自ら習得した知識や工夫といったものは誰かと共有し、コミュニケーションを取りつつ、お互い助け合いながら仕事をしたいと思っているのではないかと感じます。そして、そのような仕事の仕方は本当の仕事の充実につながるに違いありません。それを実現するためには、例えば担当者の不安を取り除く環境の整備や配慮といったものが必要です。属人化につながる原因の排除、属人化の解消・防止といった対策が理想的な仕事の実現につながると信じています。
以上4回にわたって「属人化」をテーマに書かせていただきました。突き詰めればこの「属人化」は、人が関わっている以上、どの職種どの業務でも発生する可能性があるものです。また、その解消・防止はそれほどたやすくはありません。そして多くの方々がその属人化に頭を悩ましていると思います。
もし皆さんのなかで、属人化でお困りの方がいらっしゃいましたら当社コンサルタントにお話をお聞かせください。一緒に解決策を考えていきましょう。
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