業務プロセスの効率化、コスト削減、あるいは人財対策やBCPの手段としてBPOというものが世に現れてから、しばらくの歳月が経過しました。おそらく経理部に所属される方の多くは、この仕組みについて一度は確認してみたことがおありなのではないでしょうか。実際に導入に至り、ニューノーマルと呼ばれるようになった2020年の日々を、各地のBPOセンターと共に走っておられる方も少なくないはずです。
このコラムでは、そんなBPOの現場側からの気づきを3回に渡ってお届けしていきたいと思っています。
思い返せばこの4月、政府は緊急事態宣言を発令し、出社する社員数を7割削減せよと要請しました。
しかし現実として、経理部を対応させることができた企業は全体の約4割にとどまります。多くの企業が決算期を迎える時期であったことはもちろん大きな要因ですが、その後に続いたテレワーク推奨の流れに経理部が今も乗り切れない状況にあることは、他に恒常的な課題が存在することを示しています。
避けようのないニューノーマルへの移行の中、テレワーク化の進捗は各企業の掲題するところとなっています。取り残されてしまった経理部への対応策のひとつとしてBPO導入を検討したい、という声も多く届くようになりました。
これから検討を始めよう、あるいはゼロベースで再検討してみようというご担当者様の中には、今回初めてBPOに取り組むという方もいらっしゃるでしょうし、すでに概要は把握しているという方もおられるでしょう。BPOコンサルティングの現場からそのいずれの場合にもお勧めしたいのが、下記の3つの視点からのスタートです。
一見するとごく当たり前で、事の枝葉のようにも思えて、なんだ、と少し肩透かしのようなお気持ちになられたかもしれません。
(1)の「こうなりたい」姿は、いわゆるゴールイメージですが、検討の当初は、ややもすれば漠然とした形が空にポンと浮かんでいるだけのような感覚になったりもします。でも、それでいいのです。
その空間は現状の経理部の姿と「こうなりたい」姿の乖離部分で、実はそこに、当たり前の中に埋もれて今は目に見えていない課題が詰まっています。つまり、透明な課題に姿を与えてひとつずつクリアしていけば、現状と「こうなりたい」の間隙は自ずと埋まり、両者が繋がってくるわけです。
また、課題の認識は、対象としたい業務の選定や、経営の意思決定、各部署調整の要否等、BPOの根底に様々に関わっています。それゆえに実際の切り出し作業の中では、あの業務もこの業務もと気にかかってコア・ノンコアの判断基準がぶれてしまったり、関連業務同士であちらを立てればこちらが立たなくなってしまったりというような混乱も起きます。
そんな時、お客様に立ち返っていただくのも(1)です。「こうなりたい」姿を思い浮かべることで、それを物差しにして課題を測り、埋めたい乖離の部分に最適な姿にすることができるのです。
もちろん「こうなりたい」姿には、お客様のニーズによってさまざまな形があります。例えば、ペーパーレス・ハンコレスが浸透してテレワークで業務が遂行できる体制になっていること、経理財務部門が定型業務から開放されて企画業務・戦略業務に専念できる体制になっていること、属人化が払拭されて担当者の入れ替えがあっても業務品質が一定に保たれる体制になっていること。どれも、今より少し先でなら叶えられるはずの姿です。
業務の合間、コーヒーを啜りながら、このニューノーマルの先にある未来でどんな風に仕事をしていたいだろうか、とふと思い浮かべてみてください。その時からもう貴社のBPO検討はスタートしています。どこに出社していますか? どのようなシステムを使用していますか? お客様やチームメンバーとはどうやってコミュニケーションを取っていますか? よろしければ、みなさんの「こうなりたい」を一度お聞かせいただけませんでしょうか。
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