SAP導入、悩むユーザー部門:「ゆるふわ要件定義」を防ぐ対策3点

1.「ゆるふわ要件定義」の対策は難しい

前回のコラムでは、要件定義でよく見られる問題として「ゆるふわ要件定義」を取り上げました。
今回は、解決の方向性について考察します。

対策ポイント

ユーザー部門の立場から「ゆるふわ要件定義」を防ぐためのポイントをいくつか挙げます。

  1. 要件定義の進め方と成果物について、開始前にベンダーと合意する
  2. ベンダーとの討議セッションの前に準備し、業務要件・機能要件を説明できるようにする
  3. ベンダー作成の成果物に必要な情報が記載されているか、丁寧にレビューする

しかし、これらを実際にユーザー部門の方々が実行するのはハードルが高いです。
SAP導入プロジェクトに慣れた方で、その必要性はわかっていても対策が難しいポイントとなります。

2.なぜ対策が難しいのか?

(理由1)要件を説明するのが難しい……

上記(2)を例に挙げます。
ユーザー部門が業務要件・機能要件を説明するには、日々の業務(以下、“通常業務”)とは異なるスキルが求められます。

  • 通常業務を客観的な視点で整理する
  • それをもとに新システム機能に必要な仕様のレベルまで落とし込む
  • 以上を要件として、IT界の住人たるベンダー担当者にもわかるように説明する など

そのためユーザー部門は大いに苦労されます。
実際、ベンダーからコメントを求められ、ユーザー部門がポカーンとしている会議をお見かけすることもあります……。

(理由2)時間がない……

これはとくに上記(2)(3)で問題になる点です。
多くの場合、各ユーザーは通常業務と兼務でプロジェクトに参加されるため、多忙を極めます。

要件定義の序盤~中盤は会議中心のため、準備と参加で日々数時間拘束されることも珍しくありません。
終盤はベンダーが作成した要件定義書などのドキュメントのレビューに追われます。
見慣れないドキュメントのうえ、量が膨大で時間がなく、レビューがおざなりになるケースも少なくありません。

3.解決策は?

前項の2点、つまり「ゆるふわ要件定義」をユーザー部門として防ぐのが難しい理由は、
「多くのユーザー部門には、スキル上・工数上の理由から、要件定義の作業に対応できる人財が不足している」
という点に尽きます。

そのため一般的には、解決策も人的リソース面での対策になります。
大きく分けると3点で、組み合わせて採用するケースもあります。ご参考になれば幸いです。

A. システムと業務に通じた社員の育成

  • ユーザー部門内で、システム導入プロジェクトに対応できる人財を育成しておく方法
  • 情シス部門や業務企画部門に、社内コンサル部隊を常時設けている事例もある
  • 【注意点】数年以上を要する長期的な施策となるため、一朝一夕には実現できない

B. 一部ユーザーをプロジェクトメンバーとしてアサイン

  • ユーザー部門の数名をプロジェクトメンバーとしてアサインし、プロジェクト作業をメインで担当させる方法
  • 通常業務は、他の担当者による代行や派遣社員の採用などで一時的に手当
  • 【注意点】通常業務の質やスピードが落ちる(代行者のスキル次第)などのリスクあり

C. 外部コンサルタントの活用

  • ユーザー部門を支援する立場でコンサルタントを採用し、要件定義を支援させる方法
  • 3点の対策のなかではもっとも確実で即効性がある
  • 【注意点】コンサルタントに「おんぶに抱っこ」では効果を得られない(※)

(※)補足
コンサルタントは業務・システムの専門家である一方、例えば個々の会社の細かい事情や業務のやり方は把握していません。
コンサルタントの有効活用のため、以下のような点は自らご対応いただく必要があることにご注意ください。

  • 背景や業務に関する(最低限の)インプット提供
  • コンサルタントをサポートできる社員の調整
  • 作業結果のレビュー
  • 必要に応じた軌道修正 など

要件定義については以上となります。
この工程の大切さと難しさについて、改めて考えていただくきっかけになれば幸いです。

弊社はSAP-FIモジュールの導入を中心に、ユーザー部門支援の実績が多数あります。
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