システム導入のプロジェクトでは、進捗管理、課題管理、リスク管理、変更管理、品質管理など、実にさまざまな管理がプロジェクトの事情に応じて実施されています。そのなかでも、ほぼ例外なくすべてのプロジェクトで実施されており、プロジェクトを実行するうえで必須とも言える管理は、進捗管理と課題管理でしょう。プロジェクトに関わる方であれば、一度は実施したことがあり、かつその運用の難しさに悩まされた方も多いのではないでしょうか。
とくに課題管理のプロセスは、プロジェクトマネージャーから現場までのさまざまなメンバーが関与するため、適切な運用が難しく、いつの間にか機能不全に陥ってしまっているケースも散見されます。
本コラムでは、課題管理が機能不全に陥る要因とその対策について取り上げます。
機能不全に陥る要因を述べる前に、課題管理における機能不全とはどういう状態かについて課題管理の目的と効果を交えて整理したいと思います。
まず、課題管理を実施する目的ですが、これは「プロジェクトの進行上で発生した課題を適切に認識し、抜け漏れなく、確実かつ適切に対応し、プロジェクトの品質・コスト・納期を達成すること」にあります。この目的達成に向けて、課題に対する適正な解決策を迅速に導き出し、進捗阻害要因を排除しつつプロジェクトを正しい方向に導くことで、プロジェクトを最短時間で実行することが可能となります。その結果として品質・コスト・納期の達成確率が高まるという効果が生まれます。
上記を踏まえて考えると、課題管理を実施しているにもかかわらず「適切な解決策を迅速に導き出し、プロジェクトを正しい方向に推進することができていない状態」が機能不全ということになります。
では、機能不全に陥ってしまう要因とは何でしょうか。それは、課題管理の運用を続けるなかで日常的に発生する3つの問題が放置され続けてしまうことにあると私は考えています。
これは、どのプロジェクトでも日常的に発生している事象であり、あまり大した問題ではないと考えているプロジェクトも多いのではないでしょうか。しかしながら、課題管理表に、課題とは別個に対処すべきリスクやToDoなどの事項が混在した状態が続くと、本来対処すべき課題が埋もれてしまい、気付いた時には課題に対する迅速な対処ができない状態になっていることがあります。
この問題は、担当領域と担当領域の狭間に落ちるような課題、もしくは複数の領域で共同して対処する必要がある課題が発生した際に起こりやすくなっています。領域の狭間に落ち、課題に対して担当が明確に任命されず課題が放置されることにより、大きな遅延につながるおそれがあります。また、複数の領域が共同して対処すべき課題の場合、二重対応(異なる人が同じ課題に対応すること)が発生し、不要な対処工数の増加や混乱を招くおそれがあります。
1つの課題に複数の解決すべき要素が混在している場合、本来別個に検討すべき要素を混同して議論が進んでしまい解決策の検討が混乱し、議論が収束しないことによって課題検討の長期化を招くおそれがあります。また、元々の課題から派生した事象を同一の課題内で対応しようとすることで課題を完了することができなくなる場合もあります。
いかかでしょうか、課題管理を行ったことがある方であれば、とくに目新しい事象はなかったはずです。しかしながら、日常的に発生し続けるこれらの問題の対処を怠ることにより課題管理はいとも簡単に機能不全に陥ってしまいます。
それぞれの問題への対処方法は以下のとおりです。
事務局またはPMOが定期的に課題管理表を精査し、ToDoやリスクを除外します。
課題を登録したメンバーが担当者を明示的に記載せず、対応が頓挫するおそれのある課題は、事務局やPMOが検討の担当者を任命し、検討状況を監視することにより、課題が放置されることを防止します。
事務局やPMOが課題管理表に記載された課題を精査し、必要に応じて課題の記載粒度の適正化や課題の切り離しを行います。これによって、複数の要素を混同したまま解決策を検討し、対応が長期化することを回避することができます。
また、課題検討のなかで派生して新たな課題が生まれた場合は、別個の課題として元の課題とは分けて記載します。こうすることで、課題がいつまでも完了せず、結論が出た課題の蒸し返しなどが起こることを防ぐことができます。
ご覧いただいてわかるとおり、これらの対処方法も特殊な手法が必要であるということではありません。日々発生する問題に着実に対処することが重要となります。
課題管理を実施していても、課題管理の対象でないものが紛れ込んでいることや、1つの課題に複数の要素が紛れ込んでしまう状態が積み重なることで課題管理はいとも簡単に機能不全に陥ってしまいます。
もし、あなたの所属しているプロジェクトのPMOや事務局が、課題管理表フォーマットをつくってメンバーに展開し、課題検討会議で司会をしているだけというのであれば、それは課題管理においては、“価値の低いPMO”であると言わざるをえないでしょう。
価値の高いPMOは、本コラムで述べたように課題を適切な状態に管理したうえで、課題検討会議においてファシリテーションを行ってプロジェクトの問題解決を支援します。日々の管理がおろそかになっていては、いくら会議のファシリテーションがうまくともPMOの責務を全うしているとは言えないのです。
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