予算管理業務において、システムを導入しておらず、Excelで業務を実施している企業は、今もなお多数存在します。これをシステム化することで、予算・実績・予測値はデータベースに一元管理され、データ集計はシステムが自動で行うことにより、工数削減・品質向上に寄与することは間違いありません。
しかし、非定型業務の側面をもつ予算管理業務をExcelで実施している企業が、より効果的なシステム化を実現するためにはいくつかのハードルがあります。
その一例が、各部門に散在するExcelの存在です。本コラムでは、これを解決するための業務の標準化に焦点をあてて話を進めたいと思います。
Excelで予算管理業務を実施している場合、本来、統一フォーマットのはずの入力Excelが、各部門で自由に編集され、行・列の挿入、計算式の追加が行われ、後々のデータの集計を困難にしているケースをよく見かけます。
経費の配賦計算を例にとると、基本的な配賦方法は定義されているものの、部門毎に配賦基準の考え方に相違があり、各部門がそれに合わせて勝手に配賦フォーマットを変えてしまうということがあります。
これをそのままシステム化してしまうと、各部門のそれぞれのやり方に合わせた機能・ロジックが多数存在し、工数の増大、メンテナンスの複雑性を招いてしまいます。
システム化に着手する前に、まずは業務を見直し、業務の標準化を目指すことで、上記のような事態を引き起こす原因を取り除くことが肝要です。
ここでいう業務の標準化とは、部門毎の業務要件によって変えられたExcelでの業務をシステム化するために、業務を整理し、機能をできる限り統一化することです。
標準化のステップとして、①標準化機能の見極め、②例外処理の見直しという2つのステップがあります。
① 標準化機能の見極め
まずは、各部門で実施されている業務を洗い出し、それらの業務から各部門共通で実施している業務を抽出します。
一見、共通しているように判断できないような業務でも、システムで部門毎にマスタ制御を行うことで共通化できそうな業務がないかを見定める必要があります。
ここで、標準化対象とする機能を定義します。
② 例外処理の見直し
上記を定義したあと、各部門で独自に行っている計算方法やロジックなどが残ります。これらに対してはそのままシステム化を検討するのではなく、次のような観点で業務を見直します。
これらのステップを踏むことにより、シンプルな業務、メンテナンス性の高いシステムを実現することができます。
経費の配賦業務において標準化を実現した商社T社をご紹介したいと思います。T社はその業務の特性から9つの事業部毎に様々な配賦計算を実装したExcelが存在していました。
システム化にあたり、配賦元・配賦先・配賦基準という軸で業務を整理しました。配賦基準は売上高比、人員比が大半であり、それ以外の配賦基準は各部門3つまで、部門毎にマスタで定義できるようにしました。さらに、各部門での特殊な計算は、計算結果の手入力で運用可能と分かり、単純な入力項目を設けることで対応可能でした。
これにより、配賦フォーマットが1つに集約され、シンプルな業務・システムの構築を実現し、管理工数や組織変更時に要する工数を大幅に削減することができました。
システム化を推進するにあたっては、集計工数の削減、データ品質の向上も重要な使命ですが、そもそもの予算管理業務を見直すチャンスでもあります。業務の標準化においては、業務の整理のほかに、現場・経営層など幅広い組織階層の協力が必要であり、一朝一夕では実現はできませんが、中長期的な視野で是非取り組んで頂ければと思います。
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