人事制度構築支援
人的資本経営への関心度が高まっています。
2020年に政府が発表した「人材版伊藤レポート」は、今後日本企業が持続的な成長を実現するためには、コストと捉える「人材」から投資すべき資本としての「人財」と捉え、経営戦略と人財戦略の連動、人的資本に関するKPIの設定・開示と持続的な取り組みの重要性を示しました。
2023年3月期決算から上場企業を対象に、女性の管理職比率、男女の賃金格差などの情報開示が義務付けられました。
しかし、人的資本に関する開示情報は、人財育成や健康、ダイバーシティ、エンゲージメントなど多岐にわたります。また、開示を推進する専門スタッフの不足や情報収集の難しさもあるうえ、人財について現時点で多くの課題もあることから、開示を躊躇する企業も少なくありません。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが2023年6月に実施した人的資本情報開示に関する調査結果によりますと、エンゲージメントについて、「取り組めている」と回答した経営者・人事担当者は25%、管理職層ではわずかに20%という結果となりました。「取り組めていることはない」と回答した経営者・人事担当者は約2割でしたが、管理職層は約4割という結果となり、経営層と社員層には大きなギャップもあります。
一部の企業では採用や生産性について独自の指標の開示が進み、人材版伊藤レポート2.0ではその取り組みについても紹介されていますが、多くの企業で人的資本に関する情報開示が進んでいる状況とはいえません。
人材版伊藤レポートでは、人的資本経営を推進するうえで重要な3つの視点(3P:Perspectives)を提唱しました。
財務的指標は短期的な取り組みで改善される場合もありますが、人的資本経営におけるKGIは継続的な取り組みの結果、中長期的に改善されるものです。人的資本経営の実現は人事担当部門だけでなく、経営トップが経営戦略と人財戦略を結び付け、主導する必要があり、社員一人ひとりの「人材」から「人財」への変革でもあります。
そこで必要になるのは、将来に向けた人財像を明確化し、業績だけでなく人的資本に関するKGI・KPIを評価基準と連動させ、会社と社員、そして上司と部下がコミュニケーションをとりながら継続的にPDCAを回す基盤です。
人的資本経営の推進には、その基盤としての人事制度のバージョンアップが必須となります。本年が人的資本経営への一歩を踏み出す年となることを願います。