令和5年(2023年)10月20日に「企業の配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい資料を作成しました。」とのお知らせが厚労省から発表されました(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/haigusha.html)。

いわゆる家族手当に関しては、配偶者に対する支給要件に「税法上の扶養あるいは健康保険上の扶養に入っていること」などの収入要件を定めている企業が多いかと思います。しかし、これが配偶者の就業調整を招き、「年収の壁」問題に対して悪影響を及ぼしているため、国は企業に対して配偶者手当の見直しを促している状況です。

同資料は家族手当(配偶者手当)にフォーカスした内容となっていますが、大方針として「属人給を縮小して実力に応じた処遇を行う」ことを企業に促していると考えられますので、住宅手当など、家族手当(配偶者手当)以外の属人給の見直しを検討する際にも有用な資料といえます。

属人給については、「他社も支給しているから」「自社の賃金体系に昔からあるものだから」といった理由で、「何となく」支給している企業も多いのではないかと思います。また、廃止・縮小したいと考えても、不利益変更法理などとの関係で見直しを躊躇していた企業もあったと思われます。

しかし、昨今、賃金は「仕事と関係ない属人的な事情(家族の人数、住居費など)」や「年齢・勤続」ではなく「職務・実力」に応じて決めるべきというジョブ型の流れが加速しています。加えて、属人給縮小を後押しする国の動きもあり、属人給の見直しもやりやすい状況になっているといえます(もちろん、「企業側の思惑で自由に変えて良い」ということではなく、同資料にあるように「労使での丁寧な話し合い」「賃金原資総額の維持」「必要な経過措置」などはポイントになります)。

「属人給に対して従来から課題感があった企業」や「属人給の支給趣旨を正面から考えたことがなかった企業」は、これを機に属人給の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

なお、「属人給は縮小するのが正解」ということでもありません。全体傾向として属人給が縮小傾向のなか、自社の属人給を手厚くすれば、他社との差別化を図ることができます。これが自社の人財面での競争優位性につながるのであれば、属人給の維持、引上げなどの判断があっても良いと思います。

いずれにしても、「自社が何のために・何を目的として属人給を支給しているのか」を見つめ直し、「会社として厚く報いたいと考える人財に対して、適正に賃金が配分される形になっているか」を検討してみるのが良いと考えます。