男性の育休取得率が上昇傾向にあります。7月末に厚生労働省が発表した雇用均等基本調査によりますと、2022年度の男性の育児休業取得率は、前年度調査を3.16ポイント上回る17.13%と過去最高となりました。数値には、2023年10月から始まった「産後パパ育休」は含まれておらず、次の調査では取得率のさらなる改善が見込まれますが、政府が目標として掲げる2025年度に50%、2030年度には85%にはまだ遠く及ばない状況です。
調査結果を詳しく見ていくと、業界によって取得率にばらつきがあることがわかります。金融・保険業では37.28%と政府目標に達しつつありますが、卸売・小売業では8.42%と、取得率だけを見れば、業界の特性などに応じてかなりの開きがあります。また、規模別でも500人以上の事業所では25.36%となっていますが、30人~99人の事業所では11.15%と開きがあります。働き方の柔軟性や代替要員が確保できるか否かなどが影響していると思われます。
しかしここで考えたいのは、男性の育児休業取得率は本来の目的を達成するための一つの指標に過ぎないということです。めざすのは、男性も育児参加し、女性も働きながら出産・育児ができる環境を整備し、少子化に歯止めをかけることです。仕事と育児を含めたプライベートの両立を図り、ジェンダーにかかわらず働ける環境を整えることが重要です。
同じく厚生労働省の調査結果によりますと、8割の職場が「代替要員を補充せずに同じ部門の社員で対応している」と回答しています。育休を取得することで「職場に迷惑をかけたくない」「早く復帰したい」という心理が働き、取得率、さらには取得期間を短くしていることがうかがえます。
ある大手製造業では、60歳以上のシニア人財を活用する取り組みを検討しています。子育て世代が学校への送り迎えなどで出勤しにくい時間帯をシニア世代が補い、時短勤務を取得しやすい環境を整えることをねらいとしています。シニア人財にとっても、勤務時間が短く働きやすいというメリットがあり、誰もが働くことのできる取り組みとして参考になります。
男性育児休業取得率や取得日数などの指標を達成することを目的へとすり替えずに、個社ごとの状況に応じて、具体的で実践的な施策を検討し、トライ&エラーを通じて、働く側がより使いやすい仕組みとすることが重要ではないかと思います。