人事制度再構築マスタープラン策定セッション
あなたの会社の中途採用者の比率はどれくらいですか?
日本経済新聞社が主要企業に対して行った調査によりますと、採用計画における中途採用者の割合は、37.6%となり過去最高となったようです。
とくに非製造業においては39.9%と4割に迫る比率です。
その理由について同紙は、ここ3年ほどのコロナ禍に収束が見えてきていることにともない、流通業やサービス業など対面業務の多い業種を中心に積極的な採用に転じた、と分析していますが、その背景には少子高齢化にともなう構造的な人財不足があると考えられます。新卒採用が主体だった日本企業の採用活動は今、大きな転換期を迎えています。
こうした情勢を踏まえ、今回は、中途採用者を活用・定着化していくためのポイントについて考察したいと思います。
そのポイントは大きく3つあります。
転職サイトを運営する大手企業による調査結果によりますと、転職理由の第1位は「給与が低い・昇給が見込めない」というものです。これは、年代別でも男女別でも同じ結果となっています。そして、2位は「昇進・キャリアアップが望めない」と続きます。入社時に賃金上限を提示することは、応募者にとって重要な判断基準になっていますが、入社後のキャリアを示すこともまた重要な要素といえます。
中途採用者の場合、これまでの就業経験や知識・スキルを活かした即戦力としての活躍が期待されますが、そのためには早期に組織・チームの一員として既存の社員に受け入れられる必要があります。単に入社後に担当する仕事内容を示すだけでなく、組織やチームのなかで期待される役割や行動を示すことが重要です。
そして3つ目ですが、紹介した調査結果の転職理由の第3位には「社内の雰囲気が悪い」が挙げられています。
転職入社した社員の格付けや賃金は、既存社員のモチベーションにも強く影響します。即戦力として格付けたにもかかわらずパフォーマンスがともなわないといった状況は、受け入れる側の大きな不満につながります。受け入れる側の社内の雰囲気が風通しの良いものになるよう、中途採用時の処遇の考え方(昇給や減給の判断基準、格付けや賃金決定の基準)については社内の既存社員にも周知を図ることが重要です。
年功的な人事制度は今なお多くの企業に残存しています。しかし、中途採用者が活躍し定着していくためには、会社に勤めた年数ではなく、担当する仕事の内容や期待される役割に応じて処遇する人事制度が基盤としてあることが前提となります。
さらに、先に紹介した転職サイトの運営企業が採用活動で苦労していることを複数回答で調べたところ、1位は「応募総数が少ない(56.8%)」ですが、2位はほぼ同率で「内々定辞退が多い(55.8%)」となっています。
採用時から上記1~3に関する自社の仕組みについて、しっかりと説明できることが重要となります。
今後、中途採用者の拡大を考える企業は少なくないと思いますが、中途採用の場合に最も気になるのは「採用後の転職・離職」ではないでしょうか? 中途採用者が活躍し、定着できる仕組みとなっているか、自社の仕組みについて点検が必要です。