社員の健康から人事制度のあり方について考える

新型コロナウイルスの感染拡大が依然として続き、身も心もすり減る今日、改めて健康は大切だと感じています。企業経営においても、「ニューノーマル」での働き方が浸透しつつありますが、「社員の健康」という守りを固め、「業績向上」という攻めを支えることが、未曾有の事態を乗り越えることにつながると考えます。

そこで、人間が社会生活を送るうえで欠かせない「健康」に立ち返り、社員の健康がもたらす3つの影響について紹介したいと思います。

  1. 社員の定着化への影響
    2022年6月に経済産業省が公表した「健康経営の推進について」によると、健康経営優良法人の離職率は、全国平均の離職率と比べると低い傾向があることがわかります。
  2. 株価への影響
    2021年度の経済産業省による委託調査によると、健康経営度調査のスコアが高い企業ほど、相対的に高いリターンを低いリスクで獲得できる傾向が確認できます。
  3. GDPへの影響
    2016年の米国商工会議所のレポートによると、プレゼンティーイズム(不安、不満、病気などで頭や体が思うように働かず、本来発揮されるべきパフォーマンスが低下している状態)はGDP減少の要因(労働損失)となっていることがわかります。

これら3つの調査結果から、健康経営のための取り組みは、社内はもちろん、社外に対しても意義があるといえます。社内においては、社員の会社に対する安心感・信頼感の醸成につながります。社外においては、取引先、消費者からの信頼感向上や、投資家からの信用・評価向上に寄与します。では、企業経営にとって大切な「社員の健康」のために、人財マネジメントの側面から会社としてできることは何でしょうか?

健康経営のために、まずは基盤となる人事制度について考える必要があります。
(例)長時間労働が問題である場合の施策
1.社員:役割の明確化、担当業務の見直し
2.就業場所:テレワークの推進
3.就業時間:フレックスタイム制の導入
(例)職場の人間関係に問題がある場合の施策
1.フォロー体制整備:定期面談による社員の健康状態、就業における悩みの把握
2.教育研修体制整備:マネジメント研修、コミュニケーション研修

健康のための施策の特徴は、効果はすぐには顕在化せず、結果が出るまでタイムラグがあることです。早い段階で取り組みをスタートすることが重要といえます。

企業経営の根幹は人財です。人的資本である社員が健康でなければ企業は成り立ちません。社員が心身ともに健康に働けることが、持続可能な経営・業績向上につながります。
今後日本では、人口減少、高齢化による就労期間の長期化が予想されます。限られた人財の活用、高年齢層の活力向上が共通の課題となるでしょう。健康経営という視点で人事制度構築を検討することも一つの方法だと考えます。