人的資本の減耗率は毎年40%? 研修内容を実践でフォローする仕組みを構築しよう

「先行研究によると人的資本の減耗率は毎年25%~40%」という新聞記事を目にしました。
「人財育成によって蓄積されたスキルや技能は永遠に保持されるわけではなく、毎年費用をかけて再教育しなければ低下していく」というのが理由です。
この理由(知識は時間が経てば古くなり忘れていく)自体は納得感がありますが、改めて定量的な数字で減耗率を表現されるとショッキングです。

同記事には「主要先進国の中でも非常に低い日本の教育訓練費・研修費を引き上げていくべき」旨の指摘もありましたが、同感です。
加えて、「教育訓練・研修で学んだ内容を業務で実践する仕掛け」を充実させると良いと考えます。

皆さんの会社では研修の効果測定をどこまで実施されているでしょうか?
(1)研修後のアンケートで満足度チェックのみ実施している。
(2)研修後にテストを実施し、研修内容(知識・スキル)の理解度をチェックしている。
(3)研修受講後に、受講者に望ましい行動変容が見られたかまで追っている。

(3)を実施するためには、例えば…

  • 研修受講後、受講者に、受講内容に基づいて自身の行動を変容させる3カ月間の計画(行動改善目標)を作成してもらう。
  • 受講者の上司も受講者が学んだ内容を共有し、受講者本人の行動改善目標を確認する。
  • 計画期間内は、上司も、受講者本人が研修で学んだ内容を業務で実践できているかを確認し、フォローする。
  • 計画期間終了時点に、本人の実践度合いを上司がチェック。実践不十分であれば行動改善目標を再設定(または研修を再受講)し、実践度合いが十分と判断されて初めて受講完了扱いとする。

といった仕組みを構築することが有効です。

(1)→(2)→(3)の順で研修の本質的な効果測定に近づいていきますが、(3)まで実施している会社は多くないのではないかと思われます。私どもがお客様に研修効果の測定として(3)をご提案しても、「現場の負荷・上司の負荷の高さ」を理由に敬遠されるケースが多々あるためです。

しかし、研修で学んだ内容は、業務で実践して初めて血肉化されます。
人的資本の減耗を食い止め、研修効果を最大化するためにも実践フォローの仕組みは重要です。

今、人的資本の開示が義務化されるなど、かつてないほど人的資本の重要性がクローズアップされています。そのなかで、研修内容の実践フォローは、上司にとって、もはや「余計な仕事」ではなく、「マネジメントとしての中核的な役割の1つ」となってくるでしょう。
来るべき人的資本の開示に向け、研修内容を実践でフォローする仕組みを構築しましょう。