総務省が9月19日の「敬老の日」を前にまとめた2021年の65歳以上の就業者数は、2020年に比べて6万人増の909万人でした。18年連続で増加し、過去最多です。就業率は25.1%で、65歳〜69歳に限れば50.3%と初めて5割を超えました。定年延長制度の広がりで高齢者が以前に比べて働きやすくなっていることに加えて、人手不足の状況も就業者の増加を後押ししていると思われます。
70歳まで働く機会を確保することを企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法などの関連法は2021年4月から適用されました。現時点では努力義務ですが、これまでの関連法と同様に「努力義務」が「義務」になっていくと推測されます。
就業の状況を見てみると、役員などとして働く高齢者を除くと、非正規雇用の割合が75%程度になります。足元では新型コロナウイルス禍で高齢層の就業意欲が低下し、労働市場から退出する動きも見られますが、労働市場が回復すれば“可能な範囲で働ける限り働く”ことが普通になるのかもしれません。
視点を変えて、2021年の世界の主要国の高齢者の就業率を見てみると、日本は韓国の34.9%に次いで高い25.1%となっています。米国は18.0%、カナダは12.9%、英国は10.3%、ドイツは7.4%となっており、各国とも10年前に比べて上昇しています。
日本では、いわゆる「年功序列」は薄れたとはいえ、今でも昇進・昇格の際には「年齢」が考慮され、一定の年齢(60歳が多い)に達すれば、全員一律で「定年退職」し、定年退職後の再雇用では多くの場合、定年前よりも賃金は低くなります。それに対して、アメリカでは、雇用(採用、配置、昇進、処遇)はすべて能力本位であり、能力と関係のない要素は徹底的に排除されます。これが、アメリカの「雇用機会均等法」の考え方です。そして、雇用のプロセスに能力と関係のない要素を持ち込むことを「雇用差別」と呼びます。内訳としては「年齢差別」「人種差別」「性差別」などになります。
日本では70歳までの雇用が義務となることが予想されるなかで、現時点で日本の企業に欠落していることは、高齢者社員への「研修」ではないでしょうか。高齢社員の働き方は当人任せで、所属部門の基本スタンスはその状態を容認し、働き方や成果の実態として個人差が大きいのが現状と思われます。
人事主管部門が高齢社員に対して、求められる役割、働く姿勢、時代への順応などに関する研修を実施すること、さらに評価の実施、結果のフィードバック、賞与支給、給与改定を実施することを推奨します。
社員の働き方はますます多様化していきますが、人事主管部門は高齢社員が対象外ではないと認識を改めて、“同じ働く仲間”として施策を展開することが重要になってきています。ご支援できますので、遠慮なくお問い合わせください。