評価エラーは撲滅できるか~人が人を評価する本質~

各社で行われている人事評価、すなわち業績評価や行動評価の結果は、給与改定、賞与、昇降格を決定するための重要な情報ソースです。ですから、正しく評価がされていないと、社員の給与、賞与、等級が誤った情報に基づいて行われ、正確なものではなくなってしまいます。

しかし、評価は機械ではなく人間が行うため、どうしても誤りが発生してしまいます。これを「評価エラー」と呼びます。そこで今回は、たとえ「評価は機械ではなく人間が行う」ことが本質であるとしても、評価エラーを撲滅する方法はないのかについて考えてみたいと思います。
代表的な評価エラーとしては、以下が挙げられます。

  • ハロー効果(特定の優れた点があると、ほかの点も優れていると錯覚すること)
  • 論理的誤差(似たようなことを関連付けて考えてしまい、推測で判断してしまうこと)
  • 対比誤差(評価者の能力や価値観と比較し、過大・過小な評価をしてしまうこと)
  • イメージ評価(イメージや先入観で評価してしまうこと)
  • 近接誤差(評価表記入欄で近くに並んでいる評価項目が、同じような評価点になること)

これら評価エラーの内容を見ると、アナログ的な判断にともなうエラーの側面が多いと思います。デジタル数値で目標を設定し評価すればこうしたエラーは防げるはずです。しかし、評価の内容は数値で評価できるものばかりではありません。

ダブルチェックにより誤りを防ぐことは、多くの場面で行われています。一般的に、1次評価者の上司が2次評価を行うダブルチェックを行います。しかし、2次評価者は被評価者に対して距離のある存在であり、ダブルチェックの効果が制約される部分もあります。

事前に評価エラーを予防する手段として、評価者研修を行う方法があります。しかし、研修受講の機会は、年2回の評価前に毎回研修を受講するのは実際問題として難しく、研修頻度に課題があります。

最後に被評価者の側からの予防策です。もちろん、被評価者は自分の評価をチェックすることはできません。被評価者は上司に評価表を提出する際、あるいは評価面談の際、上司が評価エラーを起こさないよう、評価事実をわかりやすく上司に伝え、理解を確認する方法が考えられます。そのためには、被評価者の側も評価の知識を持つことが前提になります。

以上、まとめると、「評価は機械ではなく人間が行う」という本質上、評価エラーを完全に撲滅する方法は、私のなかではまだ見つかっていません。しかし、数値化、ダブルチェック、研修、そして評価事実に関するコミュニケーションという4つの方策を組み合わせて、0に近づけることは可能であると考えています。