「20代で管理職クラスに昇進」――大手通信会社から、2023年度より新たに取り組む人事制度が発表されました。
「ジョブ型」人事制度への移行が進み、若手の登用が増加するなか、管理職への昇進のあり方について、多くの企業で見直しが進んでいます。
2022年6月に労務行政研究所が実施した調査結果によると、現在、日本の課長クラスの平均年齢は48.0歳。最年少者の平均も38.3歳。管理職への登用において在籍年数を要件とする企業は37.4%となっており、「ジョブ型」人事制度への移行が進んでいるとはいえ、まだまだ経験に基づいて管理職に登用する会社が多いのが実態です。
リクルートワークス研究所の調べによると、アメリカでは課長クラスへの昇進年齢は平均で34.6歳、中国やインドでは20代となっており、グローバルで見ても、日本企業の管理職への登用において年功や経験が重視される傾向は際立っています。
日本企業では従来、同じ会社のなかで経験を積むその先に管理職、マネージャーというキャリアがありました。管理職への登用において社内での経験が重視された結果、「かつて私はこうやっていた」「私はこれで成功した」という経験値でマネジメントする管理者を生み出しました。確かに従来のビジネスモデルが今後も継続するのであれば、そのビジネスを経験し、蓄積してきた知識や実績は、マネジメントするうえでも重要な要素の一つとなるでしょう。しかし今は事業環境が大きく変わり、かつてのビジネスモデルからの変革が求められています。そこでは、「俺の背中を見てついてこい」型のマネジメントだけでは対応できません。
多くの企業でDX人財など事業革新に向けた新たな人財の採用が進んでいますが、在籍年数要件は、そうした人財の管理職への登用を進めるうえでの弊害となるばかりでなく、管理職は10年以上その会社でがんばらないと辿り着けないポジションとなり、キャリアとしての魅力も低下させていきます。また、経験によって登用された管理職は実務もできる管理者であることから、プレイングマネージャー化が進むこともあります。そうなると、時間外労働削減が求められるなか、部下が定時内にできなかった仕事を引き取る役割も加わり、労働負荷がいっそう高まり、管理職離れも加速していきます。
こうしたなか、マネジメントや管理職という役割・キャリアの考え方について、再定義が求められています。事業環境が大きく変化し、企業に新たな技術やサービスへの対応が求められるなか、これまでの経験だけでマネジメントすることは難しくなってきています。
しかし、マネジメント不在では事業活動は進みません。働き方が多様化するなかで、会社・部門の進むべき方向性を共有し、達成に導くためにマネジメントに求められるスキルはいっそう高度なものとなってきています。
今後は、経験の先にあるポジションとして管理職を位置付けるのではなく、会社のなかの一つの役割としてマネージャーを位置付け、専門化していく必要があるのではないでしょうか。
また、先輩・後輩、マネジメントする側・される側といった二極化から抜け出し、会社・部門の目標を達成し、会社を成長させるための重要な機能としてマネジメントが存在するという共通認識を社内に定着させることも重要です。
皆さんの会社で一番若い課長さんはおいくつですか?
マネジメントとそれを担うマネージャーについて改めて整理し、DX人財などと一緒にコア人財として位置付け、その確保・育成、そしてモチベーション向上を考える必要があります。