4月を迎え、この時期多くの企業で社員一人ひとりが目標設定に取り組んでいることと思います。
2021年に実施したパーソル総合研究所の調べによりますと、目標管理制度を実施していると回答した企業の割合は53.8%となっており、多くの企業で導入されていますが、うまく機能していないという企業も多く、最近では導入企業の割合も減少傾向にあります。
同じ調査で目標管理制度における課題を確認したところ、「従業員の仕事へのモチベーションを引き出せていない(55.8%)」「従業員の成長・能力開発につながっていない(53.3%)」(複数回答可)などが上位に並んでいます。
これら課題を踏まえて、目標設定を効果的に進めるためのポイントを考えていきたいと思います。
目標設定においては、明確な達成基準を設定することが重要とされていますが、社員側からは「定量化することが難しい業務がある」という不満を示す回答が1位となっており、目標設定がうまく機能していない実態が伺えます。
目標設定を明確化するためには、達成した状態を(1)数値基準、(2)定性的な品質基準、(3)スケジュール基準の3点から表現すると良いといわれています。3つのポイントがすべて設定されていれば達成基準は明確ですが、先の回答にあるように「定量化」を必須としてしまうと数値化しにくいものを無理やり数値化することにつながり、目標設定の負荷の増加や納得度の後退につながることが懸念されます。設定する目標の性質に応じて、達成基準の設定方法をルール化し、可能な限り簡素化していくことが重要です。
この達成基準の明確化に加え、もう一つ重要となるのが、達成に向けたプロセスに関して話し合いをすることです。
どんなに達成基準が明確でも、本人に達成に向けたプロセスが描けていなければ達成への意欲にはつながりません。目標管理制度で多くの企業に取り入れられているのは「MBO(=Management By Objectives:目標による管理)」という考え方で、マネジメントの父といわれるP.ドラッガーが提唱したものですが、その原文は「Management By Objectives and Self-control:目標と自己統制によるマネジメント」であり、同氏は「目標設定する本人が自己管理をしながら達成に向けて取り組む、自己成長を促すプロセスが重要」と言っています。
達成基準を明確化するだけでなく、その達成に向けたプロセスについて、上司と部下で話し合い、自己管理をしながら具体的な取り組みを促していくことが目標設定におけるポイントといえるでしょう。
テレワークに代表される新たな働き方が常態化するなか、個々のジョブや役割に応じた目標を明確化し、自律的な働き方を促進するという面からも目標設定というプロセスは今後いっそう重要となってきます。
貴社の目標設定プロセスを再考するヒントになれば幸いです。