育児・介護休業法改正 1年未満勤務者についての留意点

2022年4月より改正育児・介護休業法が段階的に施行されますが、準備はお済みでしょうか?
今回は2022年4月1日施行内容のうち、「有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和」についての留意点を記載します。

有期雇用労働者の育児休業および介護休業の取得要件には従来「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件がありました。今般の改正では、この要件が廃止されることになり、勤続1年未満の有期雇用労働者は「法律上対象外」ではなくなります。

ただし、2022年4月1日改正前の育児・介護休業法においても、労使協定を締結した場合には、勤続1年未満の労働者を休業対象から除外することが可能とされています。そして、この点は法改正後も変更はありません。そのため、労使協定を締結すれば、改正法施行後も勤続1年未満の有期雇用労働者(および無期雇用労働者)を「労使協定による除外対象」とすることは可能です。

改正法施行前から、労使協定を締結して1年未満勤務者を休業対象外としている企業も多いかと思いますが、2022年4月1日以降、勤続1年未満の有期雇用労働者を引き続き休業対象外とするのであれば、労使協定の再締結が必要となります。つまり、「勤続1年未満の者を休業対象から除外する」といった文言は従来のまま、有効期間の起算日だけを「2022年4月1日」とした労使協定を再締結する必要があるということです。厚労省の「令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&A」にも出ていますが、重要な情報であるにもかかわらず周知が今一つという感じがしますので、改めて留意点としてお伝えしておきます。

次に、「改正法施行前から労使協定で1年未満勤務者を休業対象外としている企業が、法改正を機に1年未満勤務者を休業対象とする形に変更すべきか」について考えてみましょう。

明確な意図・目的があって変更するのであれば、法改正を機に1年未満勤務者を休業対象にするという判断もありでしょう。しかし、とくに明確な考えがなかったり、判断に迷ったりしているのであれば、「労使協定を再締結して、引き続き1年未満勤務者を休業対象外とする」形が良いでしょう。入社間もなく、貢献・勤続いずれの実績もない社員が長期休業に入ってしまう事態は、基本的に企業にとって好ましいことではないと考えられます。「勤続1年未満は休業対象外」というルールにしたうえ、どうしても必要な人財については例外運用として休業を認める」という対応を推奨します。

いったんルール自体を緩めてしまうと、その後に不都合が生じてルールを厳格化しようとしても不利益変更というハードルが現れますし、また、ルール緩和の目的に沿わない用途での利用や悪用などのリスクも想定されます。「ルールは厳格にしておいて、ルールを緩めるかどうかは運用のなかで判断する」という構えにしておけば、個別のケースについて企業にルール適否の判断の余地を残すことができ、柔軟性も高まります。本件に限らず、労務関連の対応では、「ルールは厳しく、緩めるなら運用で」というのがリスクヘッジの一つの型といえますので、留意点として覚えておかれると良いかと思います。

人事労務アドバイザリーサービスに関するお問い合わせはこちらよりお願いします。