2026年に向けた労働基準法改正の動きと、企業が今から取り組むべきこと

2024年11月12日、厚生労働省は労働基準法改正に向けた専門家研究会を開催し、論点をまとめた「議論のたたき台」を提示しました。この報告書は2024年度内にまとめられ、労働政策審議会での議論を経て、早ければ2026年の法改正をめざすとされています。

提示された内容には、以下のような項目が含まれています。

  • 過半数代表の機能強化
  • 企業による労働時間(時間外労働、休日労働)の情報開示
  • テレワーク実施日のみ利用可能なフレックスタイム制やみなし労働時間制
  • 14日以上の連続勤務の禁止
  • 法定休日の特定
  • 勤務間インターバルの導入促進と法規制の強化
  • 副業者について、本業と副業で労働時間を通算して割増賃金を支払う仕組みの廃止

これらの論点のうち、どこまでがどの程度改正されるのか、また改正時期がいつになるのかは依然として不透明です。しかし、以下の3つの方向性が今後加速していくことは間違いありません。

  • 多様な働き方の促進
  • 長時間労働の抑制
  • 労務管理における労使間のPDCAサイクルの促進

このような流れにうまく対応し、法改正の趣旨を理解し実践していくためには、単に制度を整備するだけでは不十分です。重要なのは、「現場で機能する仕組み」をつくり、それを管理職や従業員が積極的に活用できるよう、組織的なマネジメント力を高めていくことです。
例えば、以下のような施策が考えられます。

  • 社内研修やワークショップを通じて、「なぜこの制度が必要なのか」を理解させ、全社で共有・浸透させる
  • 労働時間関連法制を正確に理解し、現場の状況に合わせて適切に運用できるスキルを管理職に習得させる
  • 従業員に対し、労働環境の変化に対応するための自己管理スキルを提供する
  • テレワークやフレックスタイム制における成果管理方法や、上司と部下の適切なコミュニケーションルールを策定する
  • 制度の運用状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて改善を図る

これらの施策は、仮に法改正が行われなかったとしても、現行の働き方改革や多様な働き方に対応するうえで非常に重要です。また、これらを適切に実施していくことで、結果的に法改正への備えも自然と整いやすくなります。

法改正に備える第一歩として、まずは自社の現行人事制度が適切に運用されているかをチェックしてみてはいかがでしょうか。制度は存在していても、運用が形骸化しているケースは少なくありません。現状を見直し、改善点を明確にすることで、法改正後のスムーズな移行につながります。

企業が労務管理やマネジメントのレベルを向上させることは、労働者にとっての働きやすさを向上させるだけでなく、企業の競争力や魅力を高めることにも寄与します。2026年の改正を待つのではなく、今から行動を起こすことが重要です。