「ゆるブラック企業」といわれない企業になるために

2013年に流行語となった「ブラック企業」は、今や働きたくない企業の代名詞となりました。
この10年で働き方改革が推進され、働きやすい「ホワイト企業」は着実に増えましたが、福利厚生やマニュアルが整備された「ホワイト企業」のなかでも、やりがいや成長を実感しづらい企業のことを称した「ゆるブラック企業」という新たなワードが出てきたそうです。昨今では、成長意欲や向上心のある若手社員は「ゆるブラック企業」から離職しやすいといわれるようになってきました。

(株)日本経済新聞社が企業関連の口コミ掲載サイトの協力を得て、残業平均が月25時間以下で、「社員の士気」の評価が低い企業を「ゆるブラック企業」として集計したところ、半数近い企業にこの傾向があったという記事を目にしました。
さらに、該当企業は、「20代成長環境」や「人事評価の適正感」の値が平均よりも低かったのだそうです。
少子高齢化がますます進み、労働力不足の打開策として多様な人財の積極雇用への取り組みも重要視されていますが、企業を存続させていくには、次世代を担う若手社員の育成や定着も、忘れてはいけない重要課題です。
新卒採用でコストをかけて採用したにもかかわらず、期待の若手社員が早期に離職しては元も子もありません。成長意欲や向上心がある若手社員こそ、企業の将来を担うキーマンとして自社で成長してほしいというのが、各社の人事が考える本音なのではないでしょうか。
私は、成長意欲のあるモチベーションの高い社員の育成の観点として以下のようなポイントを意識していくことが、彼らの成長実感と帰属意識につながるのではないかと考えます。

  1. 業務の目的を伝える

    入社から日が浅いうちは、比較的容易に作業可能なマニュアル化された業務が多いでしょう。しかし、その基本的な業務も、組織業績につながる重要な業務の一つです。
    担当してもらう業務が、どのような結果につながり、どのように組織に貢献できるのかを伝えることで、業務に対する意識や姿勢が変わります。

  2. チャレンジさせる

    基本的な業務を担当させるのに加えて、新たなアイデアを募るプロジェクトにアサインしたり、マニュアルもなく一から自分で考えるような挑戦を、早い段階でさせたりすることが大きな成長につながります。
    社歴の浅い人財にチャレンジさせることはリスクもともないますが、先輩や上司がサポートしながら、若手社員にチャレンジさせ、「任せる」ことで自分ごと化でき、仕事に価値を見出すことができるようになります。

  3. フィードバックをする

    任せた仕事は、結果を一緒に振り返るフィードバックが重要です。それまでの過程で課題があればともに改善策を考え、良かった点を認め、これまでの成果をともに喜ぶことで、自らの成果が組織に貢献できていることを実感でき、ますますがんばろう、という成長意欲につながっていきます。

さらに、これらのポイントを評価制度に落とし込むことが、「人事評価の適正感」にもつながります。
組織目標達成のための一環である担当業務やチャレンジ業務の目標を上司と相談しながら設定し、中間確認で一緒に振り返りながら目標達成に向けた業務のブラッシュアップを行います。そして、その結果がこれまで直接寄り添ってくれた上司から直接評価され、自身の報酬や処遇に反映されることが、適正感につながっていくのです。
現在の評価制度が査定のためのツールだけでなく、社員の育成・定着のためのコミュニケーション手段として活用できる仕組みとして運用できているかどうかを、ぜひ一度見直してみていただければと思います。