今後の一般職のあり方を考える

最近、ある知事が「一般事務職はいらない」と発言したことで、世間から強い反発を受け、最終的には謝罪に追い込まれたというニュースがありました。一般事務職に従事する労働者への配慮に欠ける表現だったという意味で問題発言ではありましたが、その背景には現代の労働環境の変化に対する示唆が含まれていると考えられます。今回は一般職、とくに定型事務作業を主に担当する労働者のあり方について考えてみましょう。

顧客企業から「自社の一般職の多くは、現状の仕事で現状の給与がもらえれば良いと考えており、成長意欲が乏しい」という声を聞くことがあります。こうした従業員の考え方は、現代のビジネス環境では非常にリスキーです。
現状の給与をもらうためには、現状の付加価値を維持する必要があります。しかし、AIやRPAが進展するなかで、定型的な仕事の付加価値はどんどん低下していきます。つまり、「現状の仕事をし続けるだけでは現状の給与はもらえなくなる。変化や成長を望まない現状維持志向の人でも、現状の給与を維持したいと思うのであれば、自己成長を通じて自身の付加価値を維持する努力が不可欠」となってきます。こうした危機感を早い段階で一般職に持ってもらうことは企業・本人双方にとって有益でしょう。

では、一般職が付加価値を高めるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
まず、PC関連の資格取得やRPA関連の資格取得は重要なステップです。これにより、業務の自動化や効率化を推進するスキルを身に付けることができます。
また、業務改善の推進も大切です。現状の業務プロセスを見直し、効率化やコスト削減を図ることができる人財は、企業にとって貴重な存在となります。

人事制度にこれらの取り組みを反映させる方法として、例えば、評価基準に自己成長の要素を追加することが考えられます。資格取得や業務改善の成果を評価に反映することで、一般職の労働者が自ら成長意欲を持ち、スキルアップに取り組むよう促すことができるでしょう。
また、総合職へのコース転換制度の導入・周知など、多様なキャリアパスを明示することも一つの方法です。自分のキャリアを見据えたうえで、成長するための具体的なステップを示すことで、一般職が自らの将来像を描きやすくなるでしょう。

これからの時代、一般職といえども現状に甘んじていることはできません。自己成長を通じて付加価値を維持・向上させる努力を続けることが、現代のビジネス環境において求められているのです。企業の人事担当者としては、一般職の労働者がこうした意識転換を図り、成長するための環境整備を進めていくことが重要です。