年功序列の排除は等級制度の見直しから

金融業界大手が、年功序列の仕組みの排除を発表しました。
入社年次に応じて新卒社員の給与を決めてきた仕組みや、シニア層の給与を年齢に応じて自動的に引き下げる仕組みなど、これまでの年齢を軸とした仕組みを撤廃するそうです。排除に踏み切る背景には、業界を越えた人財獲得競争の激化があります。人財獲得で競合する外資系企業は賃金水準が高く、また同じく人財獲得で競争するスタートアップやIT企業では、年齢に関係なく高いポストへの登用を行う企業が少なくありません。年齢を軸に処遇を決める仕組みでは人財獲得競争に太刀打ちできないという現実があります。

今でも多くの日本企業の人事制度には年功的な仕組みが残っています。一般財団法人労務行政研究所の直近の調べでは、年齢給は減少傾向にはあるものの26.4%と4社に1社の割合で導入されており、昇格要件に滞留年数を用いる企業も少なくないと思われます。シニア人財の人事制度でも一律年齢を軸とした減額の仕組みなどは多く見られます。

年功的な仕組みの脱却は多くの企業で課題となっていますが、どのように進めるべきでしょうか?

私は人事制度の根幹となる等級制度の見直しから着手すべきと考えます。等級制度は、会社として社員を育成・活用・処遇していくうえで、何を軸とするのかを明示する仕組みであり、評価制度と賃金制度のベースとなります。

等級制度には、能力に応じて格付けを行う職能資格制度と、期待する役割や仕事に応じて格付けを行う役割等級制度や職務等級制度があります。

職能資格制度はこれまで多くの日本企業に取り入れられてきた制度です。これは職務遂行能力のレベルに応じて格付けする仕組みで、今でも50%以上の企業で導入されているという調査結果があります。能力は一度身に付ければ基本的に下がることはなく、したがって職能等級に応じて決定する基本給である職能給は下がることのない年功的な賃金となります。また職能資格制度においては、経験によって能力も高まるという考えから、昇格要件に在級年数を設定するケースも多く、「もう〇〇年いるからそろそろ」というような年功的な昇格にもつながっています。

一方、期待する役割や仕事に応じて格付けをする仕組みで注目したいのは、役割等級制度です。直近の調査では導入企業も4割を超え、職能資格制度に迫る勢いで広がっています。
役割等級制度においても能力は重要ですが、評価されるのは期待される役割に対する結果や、そのプロセスにおいて能力が具体的に発揮された行動となります。賃金も役割等級に応じた役割給とすることで、年功的な要素を排除することができます。
年功的な仕組みから抜本的な見直しを図るために、等級制度を年齢や年功と切り離し、期待される役割に基づく仕組みとすることをお勧めします。

一方で役割等級制度は、これまで以上にマネジメントスキルが求められる仕組みでもあります。導入後は、評価をする管理者のみならず、評価を受ける社員に対しても制度の理解度を高める施策が重要となります。