評価制度を見直すうえで留意すべきポイント

大手損害保険会社が人事評価を見直すという記事に目が留まりました。
同社内で発生した不祥事の根本的な原因の一つとして、過度に利益に偏重した評価や上意下達の企業風土が考えられるとして、このたび評価制度を全面的に見直すそうです。

一般財団法人労務行政研究所が2022年に発表した調査結果によりますと、2017年度以降、評価制度の見直しを行った企業は54.5%と、2社に1社は評価制度を改定したと回答しました。一方で、Job総研が実施した「2023年人事評価の実態調査」によりますと、現在の評価に不満を感じていると回答した割合は75.2%。「とても不満を感じている」と回答した人も4人に1人という結果となっています。

コロナ禍に端を発した働き方の多様化やジョブ型人事制度への移行を背景に、多くの企業が評価制度の見直しに取り組んでいますが、評価は社員一人ひとりの賃金や処遇のベースとなるものであり、モチベーションに直結することから、慎重に取り組む必要があります。

評価制度の見直しを進めるうえでのポイントを整理してみました。

  1. 評価基準
    冒頭で紹介した労務行政研究所の調査結果で、「制度改定を行った」と回答した企業の約8割が「評価項目・評価基準」を改定しています。何を評価するかということは、会社が社員に何を期待するかという強いメッセージとなります。ESG経営や人的資本経営が叫ばれるなか、短期的な財務指標に偏重した評価体系になっていないか、結果だけでなく変革に取り組んだプロセスも評価できる仕組みとなっているか、など自社の戦略にマッチした評価項目・評価体系となっているかはチェックが必要です。
  2. 評価運用ルール
    同じく労務行政研究所の調べで、「評価制度を改定した」と回答した企業のうち、約8割の企業が評価基準の改定に取り組みましたが、「評価者に対する研修を行った」と回答した企業は35.2%にとどまりました。また、「評価を受ける側の被評価者研修まで実施した」という企業はわずかに7.4%という結果となっています。
    評価制度は、目標設定面接やフィードバック面接を通じて社内にPDCAサイクルをつくり出すエンジンに位置付けられますが、適切に運用し効果を生み出すためには、評価者のみならず被評価者も含めて制度の目的を正しく理解し、正しい運用スキルを習得することが重要となります。
  3. 定期的な基準の改定ルール
    そして最後に重要なのは、定期的な評価基準のメンテナンスです。評価制度は本来、使いながら改善を加え、効果を生み出していく仕組みです。期ごとの経営計画・部門計画を検討する際に、併せて社員に求める評価項目や評価基準が計画に合致したものとなっているかをチェックし、更新するプロセスまでつくり込むことをお勧めします。

評価制度の目的は、単に賃金を決めることではなく、人財の育成やモチベーションの向上につながります。また、正しく運用することで、意識改革、新たな社風の醸成にもつながる仕組みです。
前期のフィードバック面接や今期の目標設定面接を行うこの時期に、改めて自社の評価制度についてチェックしてみてはいかがでしょうか?