処遇改善と生産性向上はセットで進めよう

30数年ぶりのベア、新卒初任給の上昇などの報道に見られるように、規模や業界を問わず、賃金水準の引き上げという流れが広がっています。
日本労働組合総連合会が、2024年4月16日までに回答があった約3,200社の賃上げ率を集計したところ、1991年以来33年ぶりとなる5%超えの水準となっています。
また、4月23日に(株)産労総合研究所が発表した初任給調査の中間集計では、大学卒は22万6,341円で前年度比8,706円(4.01%)増となり、中間集計で回答のあった7割以上の企業が初任給の引き上げを行っています。
しかし一方で気になるのは、日本の生産性です。2023年の日本の労働生産性は、時間当たりでOECD加盟38カ国中30位、1人当たりでも31位となっており1970年以降で最も低い順位で低迷が続いています。

こうしたなか、スーパー大手のイオンがAIを活用してパート社員の業務を拡大するという記事が目に留まりました。
食品や衣料品などの販売部門にAIを用いた業務システムを導入することで、これまで正社員が中核業務として担っていた販売計画や勤務計画の作成をパート社員に移管し、正社員の負荷を軽減するそうです。そのため、国内に約40万人いるパート社員全員を対象にAIを活用するための研修を行うほか、仮想現実(VR)の端末を使った接客技術の向上にも取り組むそうです。
同じくイオンは、2023年12月に総合スーパーをはじめとした40社のグループ企業に、正社員と同等の基本給や手当てをパート社員にも支給する制度の導入検討を発表し、時給を平均で7%引き上げることを労使で合意しています。

物価上昇への対応や労働力確保のために処遇や賃金の改善に取り組むことは必要ですが、イオンのように、併せて付加価値や生産性の向上に取り組むことが重要となります。

処遇改善と生産性向上を合わせて進めるうえでのポイントを整理してみました。

  1. 期待される役割や職務から見直しを行う
    賃金アップを単なる処遇改善としないためには、単に業務を依頼するだけでなく、業務の改善や効率化、AI技術の習得など付加価値や生産性の向上に必要なスキルの習得を含め、期待される役割や職務を見直し、明確化することが必要です。
  2. 適正に評価を行い処遇に反映する
    そして、付加価値向上や生産性向上への貢献を正しく評価する仕組みが必要です。労働生産性を改善するための取り組みとして、仕事を効率化し労働時間を短縮することも重要ですが、働く側の生産性向上への意識改革やモチベーションの向上も必要となります。そのためには、役割に対する結果を正しく評価し、給与改定や賞与などに適切に反映することが重要となります。

処遇の改善と合わせて労働生産性の向上に取り組むことは、企業のみならずそこで働く人たちの持続的な成長やモチベーションの維持・向上にも不可欠です。
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