連合が2024年3月15日発表した2024年の春闘結果(1次集計)は、賃上げ率の平均が5.28%(33年ぶりの高水準)となりました。ここで私が注目したいのは、組合の要求を超える回答(満額を上回る回答)が続出していることです。このことは少々問題をはらんでいるように思われます。
というのは、会社の方が労働組合よりも組合員の労働条件のことを考えてくれるとすれば、わざわざ給料から組合費を捻出して労働組合をつくらなくても良いのでは、という声が増加するのではないかということです。35.2%(1969年)であった労働組合組織率が16.3%(2023年)まで低下しているのは、そのような現象がすでに起こっている可能性がある、といえるかもしれません。
しかし、私は労働組合の役割を労働条件の維持・向上に限定して考えるべきではないと思います。第3次産業に携わる労働者の割合が74.3%(2022年)を占め、知的労働が増加し、働き方が多様化している今日、労働組合にはその特徴を活かした新たな活動が求められていると考えます。
労働組合の主な特徴は、以下の3点です。
例えば、ある大手総合商社の労組では、全組合員を対象とした調査で約120部署の働きやすさのデータを収集し、職場ごとに課題を分析して経営側に人財戦略を提言したり、組合役員がキャリアコンサルタントの資格を取得して個別に組合員の相談に応じたりと、新機軸を打ち出しています。労組の各職場・各組合員とのつながりの強さや、会社の評価を気にせず本音を言えるという、労働組合の強みを活かした活動です。このような会社や組合員に対するコンサルティングサービスは、有用なものとして拡大していくと考えられます。
一方、労働組合のない企業においては、前述した労働条件の維持・向上や人財戦略の策定、社員のキャリア開発に関する指導などは、人事部や上司・部下の職制を中心に行われてきました。その内容については、労働組合がある企業に比べて特段差はないと思います。しかし、傾向として社員の声を収集するという施策が十分ではない場合があるようです。そのため、例えば、
などを検討し、社員の声を必要に応じて経営諸施策に反映できる体制を整備しておいてはどうかと考えます。