人事制度構築支援
ESG経営・サステナブル経営が重視されるなかでパーパス経営に取り組む企業が増えています。
パーパスの意味は「目的」「目標」「意図」ということになりますので、パーパス経営とは、自社の存在意義を明らかにし、それを軸に経営を行うことを意味します。ビジョナリー経営と似た考え方となりますが、パーパス経営は、ビジョン、ミッション、バリューの上位概念として位置付けられます。大きな違いは、自社のビジョンやめざすゴールだけではなく、社会にまで視点を広げ、自社の社会的な存在価値や社会貢献度を含め、いかに社会に価値を提供するのかを定め、それを経営の軸として事業を行うことが強く打ち出されている点にあるようです。
このパーパス経営には大きく2つのメリットがあると考えられます。
持続的な事業を実現していくためには、顧客や取引先のみならず、社会や投資家などから広く理解を得て、支持を集めることが必須となります。自社の社会的な存在意義を明らかにし、それに基づく経営を行うことにより、ステークホルダーからの支持拡大の可能性が高まります。ステークホルダーからの支持の拡大は、ひいては、自社のブランド価値を高めることにもつながります。
自身が仕事を通じていかに社会貢献できるかは、若手層を中心に多くの人が仕事を選択するうえでの重要な判断基準となってきました。パーパス経営の推進は、そうした人財の獲得や、組織・チームとしての一体感の醸成、そしてエンゲージメントの向上という人的資本の価値向上の面で大きなメリットが期待できます。
また、社会的な存在意義を示し、それを軸に経営を進めることは、「価値共有型」のアプローチとして社員の法令遵守への意識を高めるという面においても有効です。
しかし、パーパス経営の推進状況に関する認識は経営者と社員で大きなギャップがあります。
2022年6月にインターブランドジャパン社がJPXプライム市場上場企業を対象に行った調査結果によりますと、経営者は86.4%がパーパス経営を「事業を通じて実践できている」と回答しましたが、社員側は52.0%にとどまりました。
実現に向けた取り組みとしては、まずは自社のパーパスを明確化することに始まり、ステークホルダーへの情報発信・交換機会の設定などさまざまな施策が考えられますが、私たちはそのなかでも、人事制度の改定が有効な手段になり得ると考えています。
例えば、私たちは人事制度の再構築にあたり、経営者・社員へのインタビューを通じて、その会社のパーパスを人事制度のスローガンに取り入れることを重視し、提唱しています。
ダイバーシティが広がり、個々人の働く目的や働き方はいっそう多様化が進んでいきます。そうしたなか、人事制度を検討するプロセスは、パーパスを再確認・共有する最適の機会となりますし、パーパスに基づいて設定された人財像から生み出される目標設定、遂行、評価、検証というマネジメントサイクルは、パーパスに基づく会社と社員、そして上司と部下のコミュニケーションを促進する活動ともなります。
パーパス経営は、「人」へのアプローチを中心とする実践ベースで推進していくことから、大規模な設備投資の必要もなく、意識の浸透がさせやすい中堅規模の企業で取り組みやすいものと思われます。次世代の育成や採用難にお悩みの企業の皆様などは、検討してみてはいかがでしょうか。