IPO支援(株式上場支援)
IPOをめざす際、企業はガバナンスを強化するため、J-SOXに準拠した内部統制の整備が不可欠です。この過程で、システムのリプレイス(交換や刷新)を行うことは多くのメリットをもたらす一方で、内部統制に影響を与えるリスクも存在します。本コラムでは、IPO準備中にシステムリプレイスを行う際のJ-SOX対応における影響と、その対策方法について解説します。
システムリプレイスは、業務プロセスやデータ管理に大きな変化をもたらし、内部統制の有効性に影響を及ぼす可能性があります。とくに次のような問題が懸念されます。
システムの変更により、既存の業務プロセスや内部統制が無効化されたり、不備が生じたりするリスクがあります。例えば、アクセス権管理や取引の承認プロセスが新システムに正しく反映されていない場合、内部統制が効かなくなるリスクがあります。
システムの切り替え時に、データの移行ミスや紛失が発生するリスクがあります。移行データが正確でないと、財務報告に影響を及ぼし、J-SOXにおける信頼性が損なわれる可能性があります。
J-SOXにおいては、業務プロセス上の統制が適切に実施されたことを示す証拠、すなわち「証跡」が求められます。システムリプレイス時に、証跡が適切に取得できなくなると、内部統制の有効性を証明できなくなる可能性があります。
システムの変更は、IT全般統制(ITGC)の再評価を必要とします。とくに、アクセス権管理やシステム変更管理、バックアップ管理、インシデント管理の不備が生じると、全体の統制環境が弱体化するリスクがあります。
システムリプレイスがJ-SOXに与える影響を最小限に抑えるためには、慎重な計画と対策が必要です。以下のような対応が効果的です。
システムリプレイス時には、既存の内部統制が新システムでも機能するよう再評価を行います。とくに、業務プロセスやITGCが新システムでも適切に動作するように、プロセスの再設計やコントロールの調整を行うことが必要です。
データの移行には細心の注意が求められます。移行計画を詳細に策定し、移行データの正確性と完全性を保証するためのテストを実施します。移行後も継続的にデータの正確性を検証し、必要に応じてバックアップ手段を確保します。
新システムにおいても、業務プロセス上の統制が適切に行われたことを示す証跡が確保されていることを確認します。システムリプレイス後は、証跡の取得や保存方法を再評価し、評価の際にスムーズに対応できる体制を整備します。
システム変更にともない、ITGCの再評価を行い、とくにアクセス権管理やシステム変更管理、インシデント管理が適切に行われているかを確認します。システム導入直後はとくに定期的なレビューを実施し、統制環境の継続的な改善を図ります。
IPO準備中にシステムリプレイスを行う際には、J-SOX対応において多くのリスクがともないますが、適切な対策を講じることで、これらのリスクを最小限に抑え、より強固な内部統制環境を整備することが可能です。リプレイスの成功は、慎重な計画と組織全体の協力に依存し、そしてIPO達成にも大きく貢献することになると考えます。