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Sustainable(サステナブル)という単語は、サステナブルな経営、サステナブルな企業、サステナブルなファッションなど、サステナブルな〇〇というキーワードがたくさん見受けられることから、かなり世の中に一般的に認知されてきたという感じを受けます。
会計に関して「サステナブル」というキーワードを付けてインターネットを検索してみると、「環境会計」、つまり『企業が取り組んでいる「環境保全活動に関する費用と効果』を数値化(定量化)することで、その環境保全の取り組みを評価する会計手法のこと」を意味する内容が結果として表示されるケースが比較的多いと思われます。
環境会計という単語自体、私が公認会計士になりたての頃(30年以上前)から少しずつ聞かれるようになったと記憶しておりますが、この制度自体はそもそも財務会計とは全く別物という感じがあり、かなり特殊な分野という印象でした。
今回は、「サステナブル」という単語が普通に使われるようになっている状況において、会計=普段行っている財務会計に関係する業務への適用可能性について考えていこうと思います。
Sustainable(サステナブル)という単語の和訳は「持続可能な」になるかと思いますが、私がSustainable(サステナブル)からイメージするものとして、ピアノのサスティンペダルがあります。
上記画像の一番右(1)のピアノペダルになります。
接頭語の「サステイン(sustain)」は、「サステナブル(Sustainable)」の動詞になります。
ピアノの場合、長い(ポ~~~~ンみたいな)音を発生するためには、ずっと鍵盤を押し続けないといけないのですが、このペダルを踏むと、鍵盤を押してすぐ(ポンと)放しても、このペダルを踏んでいる間、押した鍵盤の音を(ポ~~~~ンと)伸ばすことができるようになるのです。
つまり「同じ動きを長時間し続けなくても、短い動きで同じ効果を得ること」がサステナブルになるのではと考えます。
前項で私なりのサステナブルなイメージを「同じ動きを長時間し続けなくても、短い動きで同じ効果を得ること」と定義しましたが、これを(少し強引になりますが、)「同じ業務を何度もしなくても、1回の業務で同じ効果を得ること」とも言い換えることができるのではないでしょうか?
そう考えると普段行っている会計業務にサステナブルな考えを適用することができるのはと思います。私もいくつか考えてみました。
1つ目は会計仕訳に関する二重入力廃止です。
会計仕訳伝票を起票するにあたっては、伝票起票のもととなる会計取引データを二重入力せず、1回の入力で終わらせることです。
まずは社内における事業(例:売上、購買)、管理業務(例:人事・給与)システムと会計システムとのインターフェース処理の構築が挙げられると思いますが、もう少し対象を広げてグループ会社間の売上仕入取引に関する会計仕訳連携や、グループ会社以外の会社(金融機関、通常の取引先など)から得られる会計取引データを利用して会計仕訳を自動作成する機能の構築も考えるべきではないかと考えます。
2つ目は多段階承認業務の廃止です。
会計仕訳伝票を承認するにあたっては、取引金額の違いによって承認者の数を増やすことはせず、1回の承認で終わらせることです。
以前、「監査法人が多数の会社の財務データを学習させ、AIで不正会計を検知」という新聞記事を見ましたが、逆に考えれば「自社が自社の取引データを学習させ、AIでその会計取引の妥当性の判断する、誤謬や不正があった場合にはそれを検知する」といったことも可能になるのではと思います。
現時点では内部統制の観点から複数関係者による確認・承認は必要なのではと思いますが、将来的には承認業務にAIを活用し、今人間が担当している判断業務を(ある程度)AIに任せることで、定常的な承認業務を廃止し、承認業務にかかる業務工数を削減できるようになるのではと考えます。
最後は繰り返し行う業務の廃止です。
例えば現在複数の支払条件別に行っている支払業務を、支払条件を可能な限り少なくし、支払業務の回数を減らすことです。極論ではありますが、支払業務を月1回、全額振込支払にすれば、かなりサステナブルな支払業務と見ることができるのではと思います。
現在、経済産業省は、企業間の取引の決済に使われる紙の約束手形について、2026年をめどに廃止するよう産業界や金融界に働きかけている状況で、各社でもその対応に尽力されているのではと思われます。資金繰りの問題も合わせて発生することになるかもしれませんが、その対応をするなかで支払条件の簡素化も考慮した対応を考えても良いのではと思います。
参考までにサステナブルな会計業務を実現するための考え方を紹介させていただきましたが、サステナブルな会計業務を自社で実現するには、従来からいわれている「業務の標準化」を行ったうえで、「ITシステム機能の活用」をより進化・推進させることで可能になるものと私は考えます。