急がば回れのIPO準備

IPO準備は、遅くとも申請期の3期前までに始める必要があり、多くの費用と長期間にわたる業務負荷がかかります。このため、なるべく少ない費用かつ短期間で上場したいと考え、無理なスケジュールでIPO準備を進めてしまった結果、準備が間に合わずに上場時期を延期するという企業も少なくありません。

IPO準備において対応が必要な事項は多岐にわたります。そのなかで、例えば、以下はTASKの完了に時間がかかるため、なるべく早い時期から取り組みを始めることが望まれます。

  1. 内部統制報告制度(J-SOX)への対応

    上場企業は、企業グループ全体の財務報告に係る内部統制について整備状況、運用状況を自ら評価し、報告することが求められます。これに対応するため、企業グループの主要な業務を文書化してリスクとコントロールを識別するとともに、整備状況、運用状況を評価するルールや体制などを構築する必要があります。この文書化や評価のルールづくりは業務量も多く、また、専門的な知識が必要となる部分もありますので、社内リソースだけでは対応しきれないことも多々あります。

  2. 連結決算早期化への対応

    上場企業はディスクロージャーへの対応として企業グループの決算情報などをタイムリーに開示する必要があります。当然、早かろう悪かろうでは開示の意味がないので、正確な決算情報の開示が求められます。企業グループ全体で早期化に取り組む必要がありますが、小規模な子会社においては経理部門の体制が十分でないこともありますので、経理・決算業務のサポート体制の構築も重要になります。

  3. 年次予算、見通し情報の作成

    決算情報の開示に加え、将来の業績予想の開示も求められます。そのため、販売予測や新規投資など、最新の情報を加味した見通し情報をなるべく正確に作成する体制を構築する必要があります。一般的に見通し情報は年次予算と経過年月の実績情報から作成されますので、妥当な年次予算の作成と速やかな実績情報の収集が重要になります。

これらは上場すれば終わりではなく、上場後も継続する必要があるので、IPO準備において継続運用できるような体制構築も必要になります。この点、決算早期化や年次予算・見通し情報の作成については、自社業務に適合したシステムを導入することで、情報収集や反復する作業などを効果的かつ効率的に継続運用する体制の構築が可能です。
また、上記以外にも上場審査のために作成しなければならない文書はたくさんあり、上場をめざす企業においては、日常業務をこなしながらIPO準備にも対応しなければならないため、非常に大きな負荷がかかります。IPO準備は主幹事証券会社などのアドバイスを受けながら進めますが、文書作成や体制構築などは自社で行わなければならず、社内リソースだけでは全然足りないこととなります。この点、外部コンサルタントなどを活用することで、社内にはない実務経験や専門的知識を補うことができ、結果的に無理なく株式上場という目標が達成しやすくなるので、積極的に活用すべきといえます。