DXグランドデザイン策定サービス
先日、現会計システムの更新について相談を受けているクライアントから、新会計システムに対する要望をお聞きした際に、
経費計上に関する請求書支払画面入力に多くの工数を要しているので省力化したい。新会計システムに請求書発行会社が直接画面入力してもらうような機能を用意したい
という回答をもらいました。
請求書入力業務を省力化したいという課題はどの会社でもよく聞かれます。その解決策として社外サービスを活用する方法があります。
私が過去に導入を支援した某有名会計パッケージシステムでも、債権債務残高確認の回答入力という機能ではありますが、取引先担当者が自社会計システムに対して直接入力するような機能があったので、新会計システムに用意すべき機能だと思いました。
この入力機能は、支払会社にとっては面倒な請求書入力業務を省力化できるという利点があります。一方、請求会社は請求書を発行するための業務に加え、支払会社の会計システムへ請求情報を入力する余計な手間がかかることから、請求会社側にとっては利点がないものになります。
そうなると、この機能を請求会社側に使ってもらうためには、支払会社側が請求会社の利点を明示する必要があります。考えられるのは、通常の支払サイトを短縮して全額を支払うことです。債権回収期間の短縮は請求会社側の利点になると考えられます。しかし、資金的に余裕がある請求会社に対しては十分な利点になり得ないことから、請求書入力会社の数が増えず、期待される効果が得られるのか不透明な提案になってしまいます。
また支払サイトの短縮化には、支払会社側に支払準備業務を従来よりも短期間で行えるように業務プロセスを変更してもらう必要があります。加えて、一時的ではありますが、支払サイトを短縮する分の運転資金の確保も必要です。このように支払会社側の負担もそれなりにあることから、採用される可能性は少ないのではと感じます。
このように考えてみると、請求会社に自社会計システムへ請求書データを入力してもらう形で請求書入力業務を省力化するというのは現実的ではないと感じました。
そうなると省力化を進めるためには、取引先に頼るのではなく、結局自社で何とかする必要があるということになります。では、どんな解決策が考えられるのでしょうか?
まずAI-OCRやRPAを活用することが考えらえると思います。AI-OCRを使って紙請求書の文字情報をスキャンして電子データ化し、作成された請求書の電子データと会計システムの連携処理をRPAで自動化することによって、手作業によるデータ入力業務よりは業務効率化を達成できます。
近年は自社の会計システムの再構築時に、グループ会社にも同一の会計システムを導入することも一般的になっています。
そのような方針をとる場合、企業グループ会社間の請求・支払取引に限定するのであれば、会計システムのなかで請求会社の取引データを支払会社の取引データとして自動連携する機能を実装する策もあります。
この策であれば支払会社側の支払準備業務をとくに変更しなくても、支払会社の請求書入力業務を省力化できます。
請求会社側で請求データの入力と承認を行うと請求会社側の会計仕訳データだけでなく、支払会社側の会計仕訳データ(正確には会計仕訳を作成するもとになるデータ)も自動作成されるイメージになります。
【請求会社側の会計仕訳イメージ】 | |||
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(借)債権 | 110,000 | (貸)収益 | 110,000 |
【支払会社側の会計仕訳イメージ】 | |||
(借)費用 | 110,000 | (貸)債務 | 110,000 |
この策は企業グループ全体で会計システムを再構築するという機会があった場合に、検討する機能として取り上げることで高い業務改善効率を実現できます。また、同時にグループ会社間の資金決済を集中化する機能(キャッシュマネジメントサービス)も検討すれば、よりいっそうの業務改善効果を上げることができます。
私見ではありますが、請求会社に自社会計システムへ請求書データを入力してもらう形で請求書入力業務を省力化するのは現実的ではなく、結局自社で対応することが必要であるという見解になりました。
最近のAI-OCRは認識率99%を超える製品も多くあり、処理結果をそのまま利用できる確率は従前よりかなり改善されています。そのため早期の業務効果を実現するという観点では、AI-OCRやRPAを活用する策で対応することが望ましいと考えます。