新収益認識基準対応コンサルティング
2023年5月2日、企業会計基準委員会(ASBJ)より、企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」および「リースに関する会計基準の適用指針(案)」等(以下合わせて「本公開草案等」と呼びます)が公表されました。本公開草案等で明らかにされたリース会計基準等の主な改正ポイントとして、今までオペレーティングリースとして賃貸借処理していたリース取引や賃貸借契約について、原則として資産・負債計上が必要となりました。
では、実際にどのような取引について資産計上が求められるのでしょうか。
本公開草案等により、例えば以下の物件は業種にかかわらず資産計上が求められるものと想定されます。
オフィス、テナント、土地、建物、社宅、駐車場
本公開草案等により、例えば以下の業種はとくに大きな影響を受けることが想定されます。
対象物件:オフィス、テナント、住宅、土地、建物
対象物件:テナント、店舗
対象物件:船舶
対象物件:航空機
このように、新リース会計基準等による影響は多岐にわたるものと考えられます。
したがって、本公開草案等の公表を受け、リース資産管理システムの導入の検討を始める会社も多いのではないでしょうか。本コラムでは、リース資産管理システム導入にあたってのポイントをシステム面から解説します。
リース資産管理システムの導入にあたっては、以下の観点での検討が必要です。
新基準で求められる会計処理のために必要な契約情報や債務情報、資産情報などのリースに関する情報を入力・管理する必要があります。実務運用を考慮すると、リースに関する情報はリース資産管理システム上で一元管理されていることが望ましいといえます。
新基準では契約開始後にリース料の変更やリースの範囲の拡大・縮小などの条件変更があった場合、各種パラメーターを更新し、リース負債および使用権資産を修正する必要があります。そのためには、条件変更や解約、分割など、契約を履歴管理できる機能が必要になります。
会計ERPとは異なる、固定資産管理システムや、リース資産管理システムを導入している企業も多いかと思いますが、リース資産管理システムの導入にあたっては、会計システムも踏まえた検討が必要です。
リース資産管理システムで計算された使用権資産の取得原価や減価償却費、減価償却累計額、リース負債の残高、利息相当額は会計システムへ仕訳として反映されなければなりません。その際、会計システムへの仕訳反映の容易さ次第でシステム導入後の業務負荷も変わるため、導入段階からシステム導入後の業務を見据えた検討が必要になります。
例えば、リース資産管理システムと会計システムの自動連携が可能な場合は、システム間の仕訳データの整形や取込などの作業が不要なため、システム導入後の業務負荷を抑えることができます。一方、リース資産管理システムから出力されたデータを会計仕訳として取り込むために複雑なデータ加工が必要になる場合は、加工の過程も考慮した導入段階からの整理が必要になります。
部門マスタや科目マスタなどの各種マスタが異なる場合、仕訳を取り込む時のマスタエラーや、会計システムに部門情報が反映されないリスクにつながる可能性があるため、会計システム上での各種マスタと、リース資産管理システムの各種マスタの整合性を確保する必要があります。マスタの整合性を確保できない場合は、対応方法も含めた追加の検討が必要です。
リース資産管理システムを導入したとしても、他のシステムとの整合性を考慮せずに導入すれば、業務の混乱を招く可能性もあります。
システム導入にあたっては、To Beの業務の姿を描くことが重要です。業務の担当部門や機能、インプット、アウトプットなどを整理したうえでシステムを導入することが必要でしょう。
※当コラムの内容は私見であり、BBSの公式見解ではありません。