電子帳簿等保存制度により、取引先との取引情報の受け渡しを電子データ(電子取引データ)で行った場合、データそのものを保存することが必要となっています。ただし、2023年12月までは、一定の場合は出力書面での保存が可能とされているため、2024年1月のデータ保存の完全義務化に向けて準備を進められている会社も多いと思います。
輸出入関係の書類は、取引先と電子データで受け渡しを行うケースが多いと思います。その保存にあたっては、関税関係の書類(貨物に係る取引に関して作成又は受領した書類等(税関に提出した書類を除く))あるいは電子取引データ(以下、関税関係書類等)に該当すれば、関税法、関税法施行規則などへの対応が必要です。一方で、国税関係の書類または電子取引データ(以下、国税関係書類等)に該当すれば、法人税法、電子帳簿保存法などへの対応が必要です。このように2つの法規制が関係しているため、実務でどのように対応したらいいかわかりづらい点も多いと思います。本コラムでは、この輸出入関係の書類の保存を電子化するうえでの留意点について考えてみたいと思います。
国税関係書類等、関税関係書類等を電子データで保存する方法として、以下の3つの制度があることは共通しています。
この3つの制度で保存するうえで、国税関係書類等の保存要件と関税関係書類等の保存要件は共通する内容が多いですが、主に以下の点で相違しています。
項目 | 国税関係書類等 | 関税関係書類等 |
---|---|---|
電子取引データ保存 (2024年1月以降) |
電子データ保存義務化 | 書面に出力して保存可 |
スキャナ保存の相互関連性確保の対象帳簿 | 関連する国税関係書類 | 関税関係帳簿(貨物の品名、数量および価格などを記載した帳簿) |
検索項目 | 電子帳簿保存法基本通達で例示 | 関税法基本通達で例示 |
保存年数 | 7年(一定の場合10年) | 5年 |
輸入申告または輸出申告における税関提出書類 | 国税関係書類等に該当すれば、保存義務あり | 特例輸入者、特例輸出者を除き保存義務なし |
この内容を考慮すると、国税関係書類等、関税関係書類等の両方に該当する場合は、国税関係書類等の要件に対応すれば、“検索項目”“スキャナ保存の相互関連性確保の対象帳簿”の内容を除き問題ないことになります。
関税関係書類等のみに該当する書類(原産地証明書、該非判定書、事前教示回答書など)は、国税関係書類等と同様の要件に従って保存することが、業務的に効率的と考えられます(例えば、一律10年にわたり保存、電子取引データは電子データで保存など)。
留意が必要な点としては、下記が挙げられます。
また、法要件対応ではないですが、輸出入関係の書類は、1つの取引で書類が多数あるため、関連付けを保持して保存することが考えられます。例えば、取引の一連番号を各書類データの検索項目に保持するか、一連の書類をセットで保存できるような文書管理システムを利用することが考えられます。
このように国税関係書類等と関税関係書類等で電子データ保存に関する要件に大きな相違がないことと、一部相違する内容をきっちり理解して対応すれば、輸出入関係の書類の電子データ保存を効率的に進められると思われます。