電子帳簿等保存制度が見直され、2022年1月以降、取引先との取引情報の受け渡しを電子データ(電子取引データ)で行った場合、データそのものを保存することが必要となりました(ただし、対応未完了の会社に配慮して、改正省令等では、2023年12月までは「社内のワークフロー整備が間に合わなかった」など一定の場合に出力書面などによる保存も可能とされています)。この制度改正に向けて、多くの企業が法要件を満たすために電子取引データを保存できるよう運用面、システム面で対応を進めています。
さらに、2023年10月開始の消費税インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、紙の書類とともに電子取引データもその対象となっており、電子インボイス推進協議会は、事業者間で共通的に使える電子インボイスシステムの構築を予定しています。
これらの潮流を踏まえ、本コラムでは、今後、電子インボイスを推進するうえでの留意点について考えてみたいと思います。
まず、新たな消費税インボイス制度へ対応するうえで、とくに留意が必要な点です。
システム対応例:
売手側は、「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」などの電子インボイスの帳票項目を追加する。
買手側は、仕入先マスタにて登録番号を追加のうえ、適格請求書発行事業者であることのフラグを立てられるようにする。
システム対応例:
買手側は、どの取引に該当するかを帳簿に入力するうえで、誤入力を防止するために取引の種類を選択できるようにする。また、仕入先マスタに登録しない仕入先もあり得るため、債務計上の画面で、仕入先の住所を入力できるようにする。
システム対応例:
買手側は、免税事象者からの仕入れの経過措置を適用するための税区分を設けて、仕入税額控除を行えるようにする。
次に電子インボイスシステムを活用するうえでの主な留意点です。
電子インボイスシステムは、電子インボイスをネットワーク上で授受するための標準規格として「Peppol」を利用することが決定しています。この「Peppol」利用と合わせて、売手、買手の前工程、後工程の業務もデジタル化することにより業務全体の効率化を図ることが可能となります。具体的には、売手における見積、受注などの工程、買手における発注、仕入れ、支払いなどの工程が対象となります。
このように、電子インボイスに関しては、今後、消費税インボイス制度に関する法対応が必要となります。とくにこの新制度は、売手側での対応も必要となりますが、対応を怠ると買手側の仕入税額控除に影響することに留意が必要です。また、この消費税インボイス制度、電子インボイスシステムとも、電子インボイスを活用するための仕組みとして準備が進んでいますので、各企業では、この仕組みを利用して最大限の業務効率化を行えるよう業務システム、会計システムの再構築を含めた十分な検討が望まれます。