新収益認識基準適用、直前期までもう少し

3月決算会社は、2021年4月1日開始事業年度から新収益認識基準が適用されることになり、残りの準備期間も1年を切ろうとしています。
一方、これから対応を始めようとしている会社もまだ多く、弊社にも毎週相談が寄せられています。

弊社では、新収益認識基準適用プロジェクトを進めるにあたっては、まずは取引ごとに会計処理を決めていくことを推奨しています。
これから対応を開始する会社が、会計処理を決めていく際にどんなことに気を付けていったらいいのか、3つのポイントを紹介します。

①業務・システムへの影響

今回の会計基準は、IFRSのように「連結だけ」ではなく、連結親会社・子会社各社の「単体」で適用が必要です。単体で適用する場合には、個社の帳簿に直接影響があるため、その帳簿の作り方をしっかりと考える必要があります。特に今回は「売上高」計上額や計上時期が大きく変わる可能性があるため、下流の財務会計システムだけではなく、上流の販売システム等にも影響を与えることも多く、影響が広範に及びます。 一方、「全ての企業が適用すべき」という会計基準ですから、逃げ道の規定も存在しており、同一の取引でも複数の会計処理の選択の余地が残されています。
そのため、会計処理を決定する際には、単純な基準の解釈のみに基づいて実施するのではなく、業務・システムに与える影響にも気を付けましょう。

②現場への理解を得られるように、会計処理決定のプロセスで経営層や営業部門への啓蒙

基準適用による売上高への影響は、主に「売上減少」と「期ズレ」の2つです。
また、販売システムへの影響も考えられるため、営業部門でもオペレーション変更の可能性があります。営業の目標管理への影響や、日常業務変更についても、基準適用前から関係各所への理解を得ていくことで、本番年度での混乱を避けることができます。
また、中長期経営計画作成に影響を与える等、基準適用前であっても経営的な関心が大きいことも、しっかりと意識してください。

③税務への影響の検討

会計基準は変更されても、消費税法等、基準改定に合わせた改正が入っていないものもあります。従来の売上高と新基準での売上高の両方を保持しないと税務申告に影響がでる可能性があることにも気を付けましょう。

今回の会計基準は、ただの「会計」への対応では終わりません。本番適用時の実務対応を意識した会計処理の決定が極めて重要です。