M&A時に必要なITデューデリジェンス

PBR向上への圧力、円安の進行、人件費を含めた物価の上昇などを背景に、既存事業の見直しや新たな成長戦略の策定によって厳しいグローバル競争のなかで生き残りを図る企業が増えてきております。その手段の一つとしてM&Aを検討している企業から相談を受けるのですが、バックオフィス業務の検討が遅れているケースが多く見受けられます。

経営企画部長
ある大手企業から弊社に関連する事業を買収する案が出ています。ビジネスデューデリジェンスに加えて、財務デューデリジェンスやリーガルデューデリジェンスを進めているのですが、情報システムについても検討しておいた方が良いでしょうか?
ぶっちー
カーブアウトでの事業譲渡の場合、情報システムについて問題となることが多いですので、早い段階からITデューデリジェンスなどの検討が必要になります。
経営企画部長
具体的には、どんなことを検討すれば良いでしょうか?
ぶっちー
まずは、買収予定の事業に関する情報システムの現状把握が必要になります。とくに、当該事業単独のシステムなのか、会社共通のシステムなのかという点です。また、パッケージシステムなのか、スクラッチ開発したシステムなのか、さらにはITベンダーとどのような契約を締結しているのかなどの全体像を把握することが必要です。買収後にどれくらいの期間システムを利用し続けられるのかなども確認しておかないと、買収後、事業を継続できなくなるリスクを抱えることになります。
経営企画部長
買収時にITデューデリジェンスをしていなかったために、買収後に苦労されたことはありますでしょうか?
ぶっちー
(1)想定以上の多額のシステム更新費用が発生した、(2)不効率なレガシーシステムが残ったままになっており、業務の効率化を図れない、(3)システムに関するドキュメントが欠落しているため、担当者が属人的に運用して人事の流動化が図れない、(4)情報セキュリティ体制が脆弱で、親会社へのセキュリティリスクを防ぐために多大な時間とコストがかかった、といったことがありますね。買収後に多額のシステム対応コストがかかってしまったために、買収価格に反映しておくべきだったと後悔されたケースもありますよ。

M&Aの現場において、どちらかというと後回しにされがちな情報システムの検討ですが、早い段階でITデューデリジェンスを実施し、買収価格への影響の有無、M&A後のシステム統合や情報セキュリティへの影響などを検討しておくことが必要です。