IPOは誰のため

IPOを目指している企業のご支援をしていますと、現場でのいろいろな悩みや問題点をお聞きする機会が多いです。先日はこんな話が聞こえてきました。

ぶっちー
いよいよ上場直前期に入り、皆さんのモチベーションも上がってきたのではないでしょうか?
経理部員
私たち現場の者はIPOなんかには興味もないし、仕事が忙しくなるだけで何も良いことなんかないですよ。IPOしたいのは社長だけですよ。

上場準備作業で疲弊した経理部員の表情を見て、これはまずいと感じました。

IPOのメリットとしては、一般的に、資金調達の多様性、会社の信用力の増大、優秀な社員の採用・・・・・等があげられますが、なかなかそのメリットが現場の社員一人一人には結びつきにくいということがあるのも事実です。

一昔前には、「子供の結婚式までは子会社に転籍せずに上場親会社にいたい」ということを聞くことがあったように、上場会社に勤めるステイタスがある風潮がありましたが、働く価値観の変化から、そういった風潮が薄くなってきたように感じます。また、そもそもIPO対応のために採用された社員以外は、もともと上場会社かどうかに重きを置かずに就職されており、今の状況でそのまま働き続けられればありがたいと考える社員もいらっしゃいます。さらに、上場企業に求められる管理水準にレベルアップしていくためには社員に求められる能力も大幅にアップしていきます。その結果、ついていけなくなる社員が出てくることもあります。

そのような環境下で、IPOに向けて各社員が一致団結してくれるためには、従業員持株制度を導入したり、幹部にストックオプションを付与するなど、社員に経済的メリットがある施策が有効となってきます。

企業の持続的成長のためにIPOが必要であれば、それを成功に導く社員のモチベーションが高まる施策を実施し、「社長だけが・・・」という発言が出てこないようにしていく必要が重要だとあらためて感じました。