今回は、コスト最適化に関する考え方の説明を行うが、まずは、コスト最適化を行う「目的」について考えたい。コスト最適化の目的について、私が一番大事だと考えるのは、当たり前ではあるが、事業の成長に必要なコストを、いかにメリハリを利かせて投下するかということである。
具体的には、事業方針に従って、利益をあげるために必要なコストは積極的に投下し、事業の成長や収益確保にとって不要なコストは除外(削除)することが必要であると考えている。
ところが、実際には、外部環境の変化や変化の兆しとは無関係に、昨年度の予算をベースにコストを積上げて集計し、それによってコストコントロールを行っている企業がよくみられる。
本来は、予算が、お金を使ってよい上限額として管理されるのでなく、必要な利益をあげるためのガイドラインというのが果たすべき機能であると言える。さらに言うと、コストの上限額を決めてしまうことで、せっかく市場が拡大傾向であるにも関わらず、適切な投資が行われないことにより、成長機会や、更に、リーダー企業になるチャンスを逃す可能性があるということである。
又、コスト削減と言うと、事業部側からはマイナスのイメージを持たれやすい。事業部側が意思を込めて活動(予算化)することが望まれるので、当コラムでも、削減ではなく最適化という表現を意識的に使用している。
上記のような目的を踏まえ、コスト削減にとどまらず、利益を伸ばせるチャンスを逸しないためのコスト最適化に向けた取り組みについて、述べていきたい。
まず、コスト最適化に向けて、分析の土台となる「どのようなコスト分類を行うことが有益か」を議論する。
今回は、製品・サービス、事業部、全社(会社全体)のレイヤーをイメージして分類する以下の考えを提示したい。
当分類は、責任者が「管理可能な範囲」と「最適化の範囲」とを考慮したものである。
尚、制度会計上の分類にとらわれると、コスト最適化に向けた分析が進まない可能性があることを提示しておきたい。制度会計上は、勘定科目(売上直接原価・間接原価/販管費等)によって分類されていると思われるが、それぞれに含まれているコストは複数の目的のものが混在していることが多い。
言い換えると、業務委託費は、ラインにおいて外注費(①)として計上されることもあれば、生産をサポートする補助部門費(②)として計上されることもあり、管理業務を委託すれば販管費(③)になることもある。よって、勘定科目だけでなく、取引特性を踏まえた分類が必要ということである。
さらに、固定費と変動費の分類についても述べておきたい。
固定費は定期契約、変動費は随意契約であることが多い。そのため、固定費か変動費かによって、最適化の方法(契約交渉)が異なる。そこで、必要に応じて、勘定科目単位の内訳科目や摘要コードなどを分類し、固定費と変動費が混在していないかを含めて調査することが求められる。
以上、限られた経営資源(コスト)をどのように配分して行くのかを判断するにあたり、適切な分類とはどういったものかについて提示させていただいた。実際には、取引先(グループ会社)なども考慮して分類する必要があるが、詳細は、第2,3回のコラムに譲らせていただく。
続いては、コスト最適化を行うにあたっての準備・土台についても言及しておきたい。
まず、言うまでもなく、最適化に向けた分析を行うにあたっては、蓄積されている情報の精度が、ある一定レベルであることが求められる。企業によっては、制度会計の情報は、決算早期化などのために、精度が粗くなっている可能性があるため、必要に応じて、管理会計の情報や上流の購買・調達システムの情報も必要となる。
又、発生源(上流システム)の情報をいかに入手できるかが大事である。会計側で恣意的に振替や配賦などが行われた結果ではなく、「発生源のコスト情報の取得」と、「統合化された会計情報との整合性」がコスト構造分析の鍵を握る。
もう一つは、実績を蓄積した上で、前述のように予算管理の仕組みが整っている必要がある。
ここで、予算について提言をするのは、予算が本来のコスト最適化に対して果たすべき役割が機能していない企業が多いのではないかという筆者の考えからである。
又、固定的な上限を定めるような予算管理から脱却するには、将来に向けた意思決定が必要であり、フォーキャスト(モニタリング)の仕組みまでも組織として保持することが、コスト最適化を進めるにあたっては求められると、私は考えている。
おさらいすると、
の3点がコスト最適化に向けて必要となる土台である。
以上、今回は、コスト最適化に関する概念的な考えを述べてきたが、次回は、コスト最適化のプロセスについて具体的に説明する。
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