第1回 連結会計システムとは?

(1)連結会計システムの歴史

(1) 黎明期

1975年「連結財務諸表原則」公布、1976年「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」公布により連結財務諸表を作成することとなりましたが、当初は個別財務諸表を補足する位置付けであり、作成企業も比較的ゆったりとしたスケジュールの中で連結財務諸表の作成を行っていました。

このような状況であれば連結会計システムのニーズ自体が醸成されているとは言えず、連結会計システムを導入する企業自体がほとんどありませんでした。

当時の連結会計システムは会計監査人がクライアントのニーズに応えて表計算ソフトを利用してシステムを作成したり、監査法人系のコンサルティング会社が片手間でシステム開発するといった程度でしかありませんでした。

しかし、いわゆる2000年の会計ビッグバンにより、これまでの個別財務諸表が主、連結財務諸表が従という関係が逆転し、連結決算中心に移り変わったことにより、連結財務諸表作成のニーズが急速に高まります。

(2) 成長期

連結財務諸表に関する制度的な主な動きは以下の通りです。

平成9年(1997年)

連結財務諸表制度の見直しに関する意見書(当初の『連結財務諸表の制度化に関する意見書』は1975年)

平成12年(2000年)

個別決算から連結決算が主体
連結キャッシュフロー計算書の義務付け
連結対象とする子会社の範囲に支配力基準導入
税効果会計に係る会計基準
試験開発費に係る会計基準

平成19年(2007年)

企業結合に係る会計基準
ストックオプション等に係る会計基準
四半期報告制度は、金融商品取引法に基づき2008年4月1日以後開始する事業年度から導入されたディスクロージャー制度です

これらの制度変更により連結財務諸表の開示が厳格化され、開示頻度も年4回となりました。当然企業の経理部門はこの対応に迫られたわけです。

この動きに伴い当時のIT基盤のオープン化の流れと相まって、比較的安価な連結会計システムの開発競争が発生しました。

連結会計システムは連結会計処理自体が高度かつ複雑であったこともあり、日本の制度に準拠した連結会計処理を自動化できるというメリットから急激に多くのお客様で連結会計システムの導入が進んでいきました。

(3) 成熟期

四半期開示が定着したのち連結財務諸表開示に関する大きな制度変更はなく現在に至っています。

国際会計基準への対応などのトピックスはありますが、開示制度の大枠を変えるものではなく、会計基準変更に近い形で終息する動きもありますので、インパクトはさほど大きいものでもないと言えるでしょう。

この点連結会計システムも機能的な成熟が進み、制度決算処理は出来て当たり前で、連結経営管理グループ経営に必要な情報を体系的に管理する情報インフラとしての活用に移行しつつあるのです。

(2)連結会計システムのできることは何か?

(1) 連結会計処理のおさらい

そもそも連結会計処理はどのように行われているのでしょうか?誤解を恐れずに骨格だけ示すと以下のようになります。

連結法:グループ企業の財務諸表を合算-外部の持ち分を控除
持分法:持分法の財務諸表は合算せず+自グループの持ち分を加算

連結法+持分法により連結財務諸表が作成されます。
つまり連結貸借対照表および連結損益計算書は親会社および連結子会社単体の貸借対照表と損益計算書を合算し外部の持ち分として控除すべき連結消去仕訳を作成します。

そして持分法適用会社についてはその企業グループの持ち分に応じた仕訳を作成します。
最終的には各社の貸借対照表と損益計算書と連結消去仕訳および持分法仕訳を合算することで連結貸借対照表と連結損益計算書が作成されることになるのです。

連結キャッシュフロー計算書に関しては作成方法(簡便法か原則法)により異なりますが基本的には連結貸借対照表および連結損益計算書の作り方と同じ流れになります。

(2) 連結会計システム

では、連結会計システムはどのような処理ができるのでしょうか?
概ねどのシステムも同様でデータのインプット、連結消去仕訳作成のプロセス、結果の確認のアウトプットの3ブロックに分かれたシステム構成になります。

連結会計システムは
ステップ1:親会社を含め連結子会社、持分法会社からデータを収集するステップ
ステップ2:各社から集めたデータを元に自動で仕訳を作成するステップ
ステップ3:収集データおよび自動で生成したデータを帳票で確認するステップ

という基本的なシステムが確立しており、ステップ1~3の流れを繰り返すことで数値精度を向上させます。

次回以降は この連結会計システムの機能についてもう少し掘り下げていきたいと思います。