今回は『2. Key Performance Indicator(業績評価指標)』のお話です。『業績評価指標』と聞くと、賞与や昇給の査定のときに効いてくる恐ろしい数値で、まるで通信簿のように考えている方も多いかもしれません。そしてその結果次第で従業員の方は思わぬ人生の転機を迎えてしまうものなのかもしれません。
しかし経営管理における『業績評価指標』は、決して通信簿でもなければ、社内政治における個人攻撃の材料でもありません。『業績評価指標』という採点基準を設定することで、従業員を一つのベクトルに向かわせ、経営者が考える戦略を実行させることに、その本質があります(本稿第1回で記載したフィギュアスケート選手と採点基準の関係を思い出してください)。では『業績評価指標』を設定する上での注意点をいくつかお話ししましょう。
いまだに多くの会社が財務指標(例えば粗利や在庫有高、原価差異等)のみを、業績評価指標として設定しています。もちろん会社が短期的利益を生み出さなければならない以上、財務指標の重要性は言うまでもありません。一方企業には将来に渡ってキャッシュを生み出す力を蓄える必要があります(いわゆる企業価値の向上です)。そのため『将来のメシの種』に、どれだけ貢献したかを測定する業績評価指標が必要となります。将来のキャッシュインを今測定することは困難なため、『非財務指標』を用いて『将来のメシの種』への貢献を測定します。将来の収益となるよう顧客へどれだけ訴求できたか、社内の業務をどれだけ改善できたか、研究開発力やブランド力をどれだけ向上させたか、といったことを一定の基準で測定し、その到達度を図っておくことが重要です。詳しいことはバランスド・スコアカードの書籍に譲りますが、もし財務指標のみで経営管理を運営している会社があれば、中長期的視点に立った自社の経営戦略をもう一度顧みて、『将来のメシの種』をいかに醸造し、それを評価していくか考えてみてください。
以上を簡単に図解したものが、図3になります。
『業績評価指標』は、単純に『①通常どの会社でも用いられている一般的な業績評価指標』、『②その業界で広く用いられている業績評価指標』、『③その企業固有の業績評価指標』の三つに分けることが可能です。例えば営業部門における売上や粗利、受注額、入金額は①に該当します。また百貨店における月坪効率(坪あたり売上・営業利益)や、通信キャリアにおける解約率は、②の『その業界特有の重要な業績評価指標』といえます。特に②の『業界固有の業績評価指標』は、内部的な業績管理だけでなく、競合他社との比較を可能にし、自社のポジショニングを知る上でも重要です。
近年企業のビジネスモデルの多様化が進み、③の『企業固有の業績評価指標』の比重が大きくなったとはいえ、②の『業界固有の業績評価指標』はしかるべき機関が発行する情報からデータを取得することが可能なものも多いため、自社の戦略を修正するよいきっかけになる上で重要です。
それでは次回は経営管理の方法論、績評価指標を定めた後、これをいかに効率的かつ安全に運用するか、その業務プロセスと情報システムについてお話しします。