これまで企業のシステム化は、ERPをベースに「法人単位」に行われてきました。企業会計では、販売・購買・生産といった企業活動から会計取引を認識します。これを会計仕訳としてリアルタイムに把握できるようにしたのがERPです。法人内の基幹システムと会計システムの統合化を目的としているために、法人を超えた管理はもともと考慮されていません。ERPベンダーは、豊富な資金力で連結パッケージやBIツールの会社を買収し、連結領域をカバーしようとしていますが、まだ道半ばです。
今までの延長でERPをベースに情報化投資を継続しても、グループ経営に資する情報基盤は完成しないことになります。このことが、長年に渡り情報化投資を継続してきた企業でも、グループの経営実態の見える化があまり進んでいない状況を作り出した要因の一つになっています。
また、多くの日本企業では、グループ全体の業務標準化が進んでいません。そのため、業務ルール、機能、プロセスが不統一です。そのため、売上高ひとつとっても、値引きやリベートの扱い、返品の扱いが拠点によって異なっているケースが見受けられます。つまり、同じグループ会社のデータを単純に比較することが難しくなっています。
コードの不統一の問題がさらに管理を難しくしています。製品コードでも販売会社と製造会社で異なっていたり、製造拠点・販売拠点の中でも拠点ごとに異なっていたりします。そのため、グループの経営実態を把握するためにデータ収集をしても、各拠点で管理しているデータをすぐには使えないという状況にあります。この点も、グループの経営実態の見える化があまり進んでいない状況を作り出した要因の一つになっています。
企業の情報化がERPを核に過去10年以上進んできました。言い方を変えると、ERPの主たる領域はシステム化が進みますが、それ以外の領域(連結管理領域)は結果的にシステム化が進まないということになります。システム化が進まない領域では、ExcelやAccess等を使ったEUCが定着しており、どのデータをどのように処理するかは、担当者に委ねられます。そのため、「データの分散」「処理の属人化」「プロセスの分断」が起きています。
連結管理の領域では、連結会計(制度連結)については基準も明確であり、パッケージソフトが存在しますが、その他の領域では存在しません。BIツール、ビューア等は、経営情報のパッケージソフトではなく、グラフ化や検索のための簡易言語と考えるのが適切です。これらのソフトを導入しても、結局、開発(手作り)することには変わりありません。そのため、連結経営管理の自社の仕組みを、開発する必要があります。
マネジメント要件が変わり、多様な情報ニーズが出てきます。意思決定上で「多種多様な情報」が「タイムリー」に必要になります。意思決定に必要な情報は、事業構造や組織構造で異なってきます。いつくか、代表的な事例を列挙します。
上記で認識すべきは、「会計システムからだけでは提供できない情報が多い」ということです。自社の事業構造、組織構造を踏まえ、また自社の抱えている課題を整理し、情報整備に向けた取り組みが必要となります。
BBSでは、グループ経営に必要な情報を体系的に管理する情報インフラを「連結経営管理基盤」と呼んでいます。グローバル経営を行う上での課題を200程度に類型化し、最低必要となる8つのコンポーネントを定義しました。多岐に渡る情報ニーズを、下位のコンポーネントで体系的に処理を行い、必要な粒度でグループ業績管理コンポーネントにデータを供給し分析を行うことで初めてグループ経営で必要とするデータを提供することが可能となります。データ構造は会社によって異なり、整合性を確保しつつ連結経営管理基盤を構築していくために、グランドデザイン(青写真)を作成することを提唱しています。