第7回 連結経営管理基盤の実装方法

スクラッチという選択

連結経営管理基盤は、企業の組織構造や経営管理方式で大きく異なります。制度連結以外の領域は、経営スタイルそのものに直結するために、「類型化が難しい」つまり「パッケージ化し難い」テーマです。また、経営環境、事業構造、組織構造の変化に併せて、継続的な機能変更・機能充実が求められます。しかし、パッケージでは、その構造的な制約から柔軟な対応が難しく、リスクが高いというのが実情です。また、個々にパッケージを入れた場合、マスターの重複メンテナンスが必要になるとともに、ライセンス料、保守料が継続的に発生します。また、他システムとの統合が困難になるリスクもあります。連結業績管理を中心とする分析機能はBIツールが向いていますが、その他の業務はデータ処理が中心でありスクラッチ開発が向いています。また、Webアプリケ―ションとすることで、国内外に拠点に導入することなく、イントラネットを介し利用することも可能になります。

企業として「本当に必要な機能」を定義し、スクラッチ開発でコンパクトに実現し、継続的に機能変更、機能充実を図っていくという選択肢があると考えます。

プロトタイプの意義

スクラッチ開発といっても、白紙の状態からスタートすると困難に直面します。それは、検討に参加するメンバーの業務知識と実装イメージ(システムでどこまでやるのか?)に、大きなバラつきがあるからです。この障害を乗り越え、円滑に企画・設計・開発を実行する上で、プロトタイプが非常に有効だと考えています。ここで言う「プロトタイプ」とは、コンサルタントの経験を活かし、企業モデル、業務モデル(機能体系、プロセス)、システムモデル(プロトタイプ・システム)を定義したものです。プロトタイプを通じて、関係者で知識を共有し、具体的な業務プロセスと実際に動くシステムを確認することで実現イメージを共有出来ます。

プロトタイプを活用することによって、グランドデザインや要件定義における「検討の質と効率」を飛躍的に向上することができると考えます。

プロトタイプの構成

グランドデザインを効率的に検討するために、多くの企業で直面している課題を類型化し、プロトタイプの開発を行いました。具体的な内容は、以下の通りです。

項目 内容 備考
企業モデルの前提 電機メーカーをモデルに、以下を定義
  • 商流
  • 会社構成
  • 移転価格対応
  • 取引通貨
組織モデル 本社、販売子会社、製造子会社の定義
  • 組織構造
  • 組織分掌を定義
業務モデル
(コンポーネント毎)
業務概要の定義
  • 業務の狙い、業務の前提条件、機能概要
  • 業務機能体系(機能モデル)
  • 業務プロセス(プロセスモデル)
  • 業務処理概要
システムモデル
(コンポーネント毎)
プロトタイプシステムの設計・開発
  • I/O設計、DB設計
  • ソフトウェア開発
開発フレームワーク部品群

プロトタイプは、理想像ではなく、業務面・システム面から検証された「現実解のモデル」と言えます。