東京建物株式会社
設立:明治29年(1896年)10月1日
本社所在地:東京都中央区八重洲一丁目4番16号 東京建物八重洲ビル
従業員数:677名(2020年12月31日現在)
事業内容:オフィスビル・商業施設等の開発、賃貸及び管理/マンション・戸建住宅の開発、販売、賃貸及び管理/不動産の売買、仲介及びコンサルティング・駐車場の開発、運営/リゾート事業、物流施設開発事業、資産運用事業、海外事業、不動産鑑定業
東京建物株式会社 住宅業務統括部
アカウントグループ 課長
東京建物株式会社 ICT・デジタル戦略推進部
デジタル推進グループ 主任
総合不動産会社として日本で最も長い歴史を誇る東京建物株式会社様。同社ではデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中で、契約書など紙を使う業務の効率化を目的にSaaS型のAI-OCRプラットフォーム「DX Suite」を導入しました。BBSは、AI-OCR導入検討以前から情報交換等でお付き合いがあり、トライアルプログラムの提供、体制構築のアドバイス、人材育成など多方面にわたる支援を通して、同社のDX推進に貢献しています。
東京建物株式会社様は、1896年に創立し2021年に125周年を迎える、日本で最も歴史ある総合不動産会社です。「Brillia」シリーズを中心とした分譲住宅事業や、都市開発事業、オフィスビル開発・運営事業などを展開しています。
デジタル化によって業界の枠を超えた競争が行われる時代となり、不動産業界の勢力図も様変わりしています。価値の高いビルや複合施設など、異業種が持ち得ない「資産」という強みを有する同社においても、さらなる競争力獲得に向けてDXに取り組んできました。
ICT・デジタル戦略推進部 デジタル推進グループ 主任を務める福山昂助氏は、「当部が2020年に創設された背景には、『DXを推進していく』という経営層の強い意思がありました。DXにはまず、あらゆる情報をデジタルデータとして集約することが必要になると考えますが、当社の業務プロセスには契約書や請求書など紙を扱うケースが多く残されており、効率化の観点でも大きな課題となっていました」と話します。
同社では全社的な業務効率化を図るため、RPA(Robotic Process Automation)を導入しましたが、そのほかにどのようなニーズがあるかを全社レベルでヒアリングしたところ、およそ1,500もの声が寄せられたといいます。
「寄せられた声の中には、業務フローに紙が介在しているためにRPAだけでは解決できない課題も少なくありませんでした。OCR(Optical Character Recognition/Reader:光学的文字認識)と組み合わせれば実現可能かもしれないという発想はありましたが、従来のOCR製品は読み取り精度に難があるというイメージを抱いていたため、導入を検討するまでには至っていませんでした」(福山氏)
そんな折、福山氏は同社が導入している会計システムの導入・運用をサポートしてきたBBSからAI-OCRを紹介されました。AI-OCRはその名のとおり、AIを搭載していることで文字認識精度が従来のOCRと比較して格段に向上しています。
「5製品程度のAI-OCRを比較・検討したところ、特に好印象を受けたのがAI Inside社のAI-OCRプラットフォーム『DX Suite』でした。手書き文字の認識精度、費用、帳票定義作成の容易さといった点で優れていたと感じました」と選定時を振り返ります。
そして2019年9月から、BBSが提供するトライアルプログラムを利用して、いくつかの部署でDX Suiteの本格的な検討を開始しました。このときの部署の一つが、マンションの建設・販売における会計関係の業務を担当する住宅業務統括部 アカウントグループです。課長を務める石川拓史氏は、これまでの業務の課題について次のように説明します。
「書類によっては、受け取った当日中にシステムへ入力しなければならないものもあり、時には遅くまで残業を強いられることもありました。手作業での入力は効率が悪いだけでなく、量が多ければ多いほどミスも発生しやすくなります。ですから、ICT・デジタル戦略推進部からAI-OCRの話を聞いたとき、すぐにでもテストしてみたいと感じました」
トライアルの結果、文字認識の精度は申し分なく、手作業での処理よりも格段に時間を削減できることがわかり、本格導入へと進むことが決定しました。
「BBSに支援を依頼し、経験が少なかったSaaS型ツール導入についてアドバイスを求めました。そして、体制づくりについても提案してもらった結果、ボトムアップ型とトップダウン型の中間を取り、現場管理者をキーパーソンとして導入を進めることにしました。さらに、上申支援や初期導入後の講習実施でもお世話になりました」(福山氏)
アカウントグループでは、いくつかの業務にDX Suiteを本格導入しました。その一つである契約書情報のデジタルデータ化について、石川氏は次のように効果を説明します。
「まず契約書をスキャンしてPDF化します。そこから、お客様が記入した内容のほか、金額や日付など物件の細かな情報をDX Suiteで読み取ります。手書きの部分は難しいのではないかと予想していましたが、人が読めないような字でない限りはスムーズに読み取れました。RPAによって、そのデータをシステムに入力するところまで自動ででき、最後にチェックするだけで済むようになりました。大型物件の初回募集時などは業務が集中するためプレッシャーを感じていましたが、今では気分も楽になりました」
また、定量的な効果の一例としては、ある契約書を300件処理する場合、最大6時間程度はかかるところ、30分で終わるようになったといいます。そのほかアカウントグループでは、紙の資料を並べ替えて整理し、それをパソコンに入力して他のデータと突合する作業があります。紙の並べ替えをせずDX Suiteで読み取って突合できるようにした結果、毎月60分を要していたのが20分で終了するようになりました。
残業になりそうだと身構えていたのが、DX Suiteがあるから心配しなくていいと思えるようになるなど精神的にも変化があり、メンバーのメンタル面にも良い影響を与えているといいます。
石川氏は、「ツールは1人の社員のような存在です。ツールに任せられることは任せて、人にしかできない業務に力を注げるようにしていきたいです」と、今後に大きな期待を寄せています。
福山氏も、「月末などに業務が集中していたのを平準化できるようになりました。特に深夜残業などの負担を軽減できるなど、働き方改革の側面でも大きな価値をもたらしています」と話します。
契約書や請求書の処理について福山氏は、ゆくゆくはすべてを電子化するべきだと考えています。そうなればAI-OCRは不要になってしまうかもしれません。しかし、構想から実装まで電子化に時間や費用や手間をかける間、今すぐできる技術活用を止めることは、賢明ではないと話します。
「まずはAI-OCRで効率化を目指して、結果的によかったと思います。いずれ不要になるからといって導入を躊躇していたのでは、いつまでたっても効率化ができないし電子化までたどり着きません」
また、今後について福山氏は、AI-OCRやRPAの導入によって生まれる余剰リソースを、新しい領域へ振り向けることが重要だと話します。
「当社ではこれまでは資産のハード面に注目したビジネスが主でしたが、その場所に住む人や集う人に何を提供できるかを考えることで、新しいビジネスチャンスが生まれます。ツール導入によって効率化できれば、新しい領域へのシフトも容易になると期待しています」
最後に福山氏は、今回のプロジェクトを総括して、「ICT・デジタル戦略推進部のメンバーも限りがあります。導入・運用にわたってBBSの力を借りることができ、スムーズに活用できるようになりました。今後も、AI-OCR関連はもちろんのこと、他のシステムについてもアドバイスやサポートを期待しています」と話してくれました。
東京建物株式会社様が今回導入した「DX Suite」は導入・運用に高度な専門知識が必要のないノーコードのWebサービスです。この技術の特性に注目し、スピード感をもった利活用で、早期に導入効果を上げられました。利用部門の知恵と改革意欲を活かす展開方法も、ビジネス変革の成功要素でした。BBSでは今後もビジネスとツールの最適な融合を図れるよう東京建物株式会社様をご支援し、期待に応えてまいります。
DX Suite はAI inside 株式会社の登録商標です。